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ECサイトをフルスクラッチで構築する際のメリット・デメリットとポイントを解説

ECサイトをフルスクラッチ(スクラッチ開発)で構築するのは、ECサイトパッケージソフトウェアを利用する場合と比べて、費用や時間がかかります。現在ではフルスクラッチは時代遅れの方式だと思っている人もいるかもしれません。しかし、フルスクラッチでのECサイト構築には、高速PDCAを実現できるという、大きなメリットがあります。

フルスクラッチでECサイトを構築するメリット・デメリットや、構築する際のポイントを解説します。

フルスクラッチでの企業のECサイト構築

ここでいうフルスクラッチとは、既存のソフトウェアや仕組みなどを一切利用せずに、ゼロからECサイトを構築する開発方式です。テンプレートやパッケージを利用しないのでカスタマイズの自由度が高く、仕様は要件にしたがって自由に決められます。しかし、サーバーや回線などのITインフラは自社で用意しなければなりません。

従来は、Webサイトや業務システムの構築はフルスクラッチが主流でした。最近では、より安価で早い開発が可能なパッケージソフトウェアやクラウドサービスが普及し、フルスクラッチの数は減少しています。

どのような費用がかかるのか

フルスクラッチでのECサイト構築には、次のように非常に多額の初期費用がかかり、ランニングコストも発生します。

  • プログラム本体の開発
    数千万円程度かかります。
  • サーバー
    ECサイトを構築するためのサーバーです。クラウドサービスを利用するか、オンプレミスで自社内にサーバーを用意します。価格の目安は、クラウドサービスの場合数千円~数万円/月です。オンプレミスの場合は初期投資に数十万~数千万円、ランニングコストに数十万~数百万円/月です。ただし価格は、性能や容量、セキュリティなどにより異なります。
  • ドメイン代
    ECサイトの住所であるドメインを取得・維持するための手数料です。価格の目安は数千円~数万円/年です。
  • 決済手数料
    ECサイトには代金決済機能が必須ですが、決済機能を使用すると決済手数料が発生します。決済手数料は決済の種類により異なり、クレジットカード決済で3~10%、コンビニ決済で2~5%、電子マネー決済で3~4%程度です。
  • ECサイトのデザイン費用
    ECサイトのデザインを外注する場合に必要です。Webデザイナーに独自のデザインを依頼すると数十万円~数百万円程度かかります。
  • ベンダーによるサポート
    ECサイトの構築・運用を外注する場合に必要です。月額で数十万円~数百万円程度ですが、料金は構築するECサイトや業者、更新頻度などによって大きく異なります。

フルスクラッチでのECサイト構築を行うのはどういう企業か

現在は、ECパッケージソフトウェアやクラウドサービスなど、より手軽な構築方法が普及しているため、フルスクラッチを行う企業はあまりありません。

それでもフルスクラッチを行うのは、このあと紹介する、「ECサイトを自由にカスタマイズできる」「高速PDCAが可能」といったフルスクラッチのメリットを必要としているからと考えられます。

フルスクラッチを行う企業は、次のような条件を満たしていなければいけません。

  • フルスクラッチでのECサイト構築を行う資金力がある
  • ECサイト自体を内製化できる技術力がある
  • 現在のECサイトをもとに改善提案を行えるマーケティング部門がある

以上の条件に合致するのは、必然的に資金力のある大企業になります。

パッケージソフトウェアでの構築との違い

フルスクラッチでのECサイト構築と、ECパッケージソフトウェアでの構築とは、以下のようにまったく異なります。

  • ECパッケージソフトウェア
    既存のパッケージソフトウェアをもとに、カスタマイズしてサイトを構築します。ベースとなるものがあるため、開発期間や費用を抑えることが可能です。ある程度は機能や外見をカスタマイズすることもでき、拡張性もありますが、パッケージの仕様による制限があります。
  • フルスクラッチでの構築
    導入時に大きな費用と時間がかかりますが、自由にカスタマイズができます。あらかじめ将来の拡張性を残しておくことも可能です。

どちらも導入して時間が経てば陳腐化するというデメリットは避けられません。新しい機能を追加したり、古くなった機能を修正したりするには、費用と時間がかかります。

ECサイトを構築するほかの方法については「ECサイトの作り方-構築方法とそれぞれのメリット・デメリット」をご参照ください。

また、オープンソースソフトウェア(OSS)での構築についての詳細は「ECサイトをオープンソースソフトウェアで構築!企業が知っておくべきことは」でご紹介しています。

ECサイトをフルスクラッチで構築することのメリットとデメリット

ECサイトパッケージソフトウェアやクラウドサービスではなく、フルスクラッチでECサイト構築をすることには、次のようなメリットがあります。

メリット

  • 自由な仕様
    ゼロから開発するので、自社の希望や要件をすべて満たしたECサイトを構築できます。開発時間や費用に影響がありますが、柔軟な仕様変更や特殊な形式のECサイト構築、予約管理システムや問い合わせ用のチャットボットなどECサイト以外の機能追加も可能です。
  • いくらでもカスタマイズ可能
    デザイン、機能、他システムとの連携など、あらゆる部分を自由にカスタマイズでき、ほかのECサイトと大きく差別化することが可能です。将来のために拡張性を残すこともできます。
  • トラブル対応や新機能追加などにも柔軟な対応が可能
    フルスクラッチ開発では多くの場合社内で開発し、管理やメンテナンスもすべて社内で行います。知識のあるスタッフが在籍しているため、トラブルや障害の発生時にすみやかな対応が可能です。新機能追加やA/Bテストなどの希望にも柔軟に対応できます。
  • ECサイトとマーケティングを連動して高速PDCAが可能
    サイト構築を内製化すれば、迅速な修正が可能です。そのため、マーケティング部門とECサイト構築部門が連携して、改善提案とテスト、分析を短いサイクルで繰り返す高速PDCAサイクルを実現できます。

    改善提案→実装テスト→分析→改善→次の改善提案

    このサイクルを短くすることで、収益向上のスピードを上げ、大きな利益につなげることが期待できます。これは、内製化したフルスクラッチだけのメリットです。

デメリット

  • 費用が高く開発時間がかかる
    フルスクラッチでのサイト構築は、開発に大きな時間と初期費用が必要です。陳腐化を防ぐために修正や更新を行うので、ランニングコストもかかります。プログラムを作成するだけでなく、サーバーやOS、回線などのハードウェアの費用も必要です。
  • 高い技術力のある人材が必要
    開発・運用管理や分析・改善提案を内製化するため、社内に技術力のあるスタッフが必要になります。具体的には、ECサイトに詳しいマーケティング部門と、迅速な開発が可能なシステム部門のスタッフの確保が必須です。
  • 使っているうちにシステムが陳腐化する
    フルスクラッチによるシステムは、クラウドサービスのように自動的に更新されません。使っているうちに陳腐化し、セキュリティ対策も不十分になっていきます。これを防ぐためには、常に新機能追加や不具合修正、セキュリティ強化などの更新が必要です。また、こまめな更新でつぎはぎを繰り返すと全体の整合性がとれなくなるため、数年程度で大幅なリニューアルも必要になります。
  • ベンダーを変えにくい
    フルスクラッチ開発を内製化していない場合のデメリットです。一度フルスクラッチ開発をベンダーに外注すると、不満足なできあがりであっても、他社に乗り換えにくくなります。開発を担当したベンダーは、開発の経緯や背景を知っているため、詳しい説明がなくても意思疎通ができるといった事情もあるためです。

ECサイトをフルスクラッチで構築するときのポイント

フルスクラッチでのECサイト構築を成功させるポイントは、システム部門によるサイト構築の内製化と、ECに詳しいマーケティング部門の存在です。

システム部門によるECサイトの内製化

開発の速度を上げ、高速PDCAを実現するためには、ECサイト構築の内製化が不可欠です。そのためには技術力のあるシステム部門が必要になります。技術力だけでなく、ECサイトやネットショッピングに対する知識や、自社の商材に対する知識も必要です。

システム開発をベンダーに外注すると、仕様検討からプログラム作成の部分に時間がかかってしまい、高速PDCAを実現できません。それでは、フルスクラッチのメリットがなくなってしまいます。

ECに詳しいマーケティング部門

高速PDCAを実現するためには、現在のECサイトを分析して改善提案を行うマーケティング部門が必要です。マーケティング部門には、ユーザビリティやキャッチコピーなどネットショッピングの知識や、自社の商材についての知識も必要になります。

システム部門とマーケティング部門がスムーズに連携することで、フルスクラッチのメリットである高速PDCAを実現できるのです。

フルスクラッチでのECサイト構築には資金力とスタッフが必要

フルスクラッチでのECサイト構築には、技術力の高い開発スタッフと、ECに詳しいマーケティング部門のスタッフが必要です。しかし、両者をそろえてフルスクラッチを行えるのは、かなり大きな企業に限られてしまいます。多くの企業ではこの条件を満たすことは難しいため、自社の状況を確認したうえで構築方法を選ぶ必要があります。

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