導入事例
全日空商事株式会社

不正利用を減らす仕組みで共同特許出願! セキュリティの高いデジタルギフト販売サイトを構築

【左】サイバーウェーブ 代表取締役 梨木 繁幸
【中央】全日空商事株式会社 デジタル・メディア事業部 デジタルギフトチーム チームリーダー O氏 
【右】全日空商事株式会社 デジタル・メディア事業部 デジタルギフトチーム マネージャー T氏

ANAグループの総合商社である全日空商事株式会社。航空関連に限らずさまざまな事業を展開する中で、デジタル商品券、クーポン、ポイントを贈ることのできるデジタルギフトに着目した。そして、2015年に「法人向け 選べるe-GIFT」を立ち上げ、2018年末にサイバーウェーブが「個人向け 選べるe-GIFT」の開発を請け負うこととなった。

今回は、全日空商事株式会社 デジタル・メディア事業部のO氏と開発時に窓口となった T氏を迎え、当社代表取締役の梨木 繁幸と「個人向け 選べるe-GIFT」の開発から運用までを語った。

マイルの取り扱いから、デジタルギフト市場へ参入

―― まずは、「選べるe-GIFT」についてお聞かせください。

T氏:当社では、以前より全日空グループ独自の電子コイン「ANA SKY コイン」を取り扱っていました。電子マネー・電子商品券はB to Bでのニーズが高いこともわかっており、デジタルギフト事業「選べるe-GIFT」を法人向けにスタートすることになりました。

O氏:企業が販売促進のために生活者にプレゼントしたり、アンケートやセミナーの謝礼の用途などで購入してもらうのが狙いですね。企業としてはURLをメールで送信するだけなので煩雑な発送作業が不要になり、送料や印刷費なども削減できます。

T氏:立ち上げ時は、物理的な金券がデジタル商品券に移行し始めた頃でした。

法人向けデジタルギフトサービス 選べるe-GIFT

個人向けサービス、予算も時間もかけずに開発スタート

— 法人向けから個人向けへと事業を拡大した理由は何でしたか?

T氏:法人向けと言いながらも、B to B to Cのビジネスモデルですので、最終的には生活者の手に渡ります。なので、徐々にCへの認知が拡大している感覚がありました。そこで、中長期的な成長を考えた時に、やはりCに対してもアプローチしていくべきということになり事業を拡大。サイバーウェーブさんとのお付き合いはここから始まりました。

— どうしてサイバーウェーブとの協業を決めたのですか?

T氏:事業拡大とは言え、当時、市場には競合が数社いて早期に事業をスケールさせるのは難しいのではないかという見方がありました。そこで、まずはトライアルとして、低予算で、時間もかけずにスモールスタートでやってみようということに。サイバーウェーブさんなら7割が完成しているVALUE KITを使うので、開発コストを抑えることができ、納期も短くて済む。さらにセキュリティを高められ、柔軟にカスタマイズできるとのことでしたのでお願いすることになりました。

梨木:受注できたときは、トップブランドである全日空関連のお仕事ができるとあって、とても嬉しかったです。VALUE KITには、ECサイトとしての決済機能もありますし外部システムとの連携も可能ですので、現金同様のギフトコードを発行するにあたって「選べるe-GIFT」のシステムと連携させたいというご要望にもマッチしていました。

認識のズレを生じさせない詳細なドキュメント作成

— 最初はどのようなやり取りをされたのですか?

T氏:まず、私たちからワイヤーフレームとシステムの連携イメージを図にしてお渡ししてスタートしましたね。

梨木:こちらもかなり細かなところまで要件のすり合わせをさせてもらい、ドキュメント作成をきっちり行いました。

T氏:サイバーウェーブさんのそういう仕事の仕方が安心感につながりましたね。システム開発は往々にして、発注側と受託側とでイメージギャップが発生します。そういうことがあったとしても、ドキュメントを確認して、打ち合わせをすることでスピーディに認識のすり合わせができました。

梨木:制作中のWebデザインをブラウザ上で共有できるワイヤーフレーム作成ツールFigmaを使って情報共有もしていました。そこで、Tさんの上司の方に「そこまで見せていいの?お客さんが自由にコメント書いたりしたら面倒じゃない?仕事増えない?」と言われたことが記憶に残っています。「完成イメージを早い段階から共有し、認識合わせをすることがプロジェクト全体にとってプラスになるんです」とお話ししました。

2社で一致団結し不正利用対策の機能を開発、共同特許申請へ

— 開発中、大変だったことはありましたか?

梨木:T氏:「個人向け 選べるe-GIFT」では個人情報は取得していないものの、それに近しい情報を取り扱うECサイトですからね。

梨木:システム標準ガイドが、67ページの本編に付録が5冊。それを全部読み解き、不明点を質問させてもらいました。

T氏:相当大変だったと思います。

梨木:とんでもありません。VALUE KITのセキュリティを改善するきっかけになりましたから、かえってありがたく思っています。

T氏:セキュリティに関しては悩ましいですよね。サイバーウェーブさんとは協議を重ねて、様々な不正対策に関する仕組みを開発してもらいましたね。

梨木:ええ、マトリックスをつくって、いくつものパターンを考えました。

T氏:不正が起きるパターンを洗い出して不正を最小化できるシステムを構築しましたよね。

梨木:想定されるパターンをいくつも考えて、さまざまなケースに対応できるようにしました。共同特許申請中なので、今後御社はもちろん私たちの強みのひとつになりそうです。

T氏:ひとつ防げたとしても、また別の方法で不正アクセスされる可能性もあり、正直、いたちごっこなんですよね。ですから、随時セキュリティレベルを上げてもらう必要があります。

梨木:開発だけでなく、こういったセキュリティ問題も継続してお任せ頂いて、かれこれ6年になりましたね。

想定外の複数購入に対して、カート周辺をカスタマイズ

— UI/UXなど、運用開始後に改善したところはありますか?

T氏:ユーザーの購入フローですね。売っている商品は「選べるe-GIFT」だけなので、最初、一般的なECサイトのような複雑な設計は必要ないと考えて、1回の決済でひとつのギフトを買えるシンプルな構造にしていました。ところが、販売実績を見てみると、複数回に分けて、たとえば500円、1,000円、3,000円と3つのギフトを買っている人がいまして。つまり、500円のギフトを買って決済を終わらせて、次に1,000円のギフトを買ってまた決済してと、非常に手間をかけさせていたのです。

梨木:しかも、ギフトなのでユーザーがカードを選んでメッセージを書く行為も発生する。そうなると、カードを選ぶ、メッセージを書く、決済するという一連の作業を繰り返しやらないといけない。そこで、ユーザビリティを向上させようとVALUE KITのEC部品をベースに、商品をカートに入れて購入するまでのプロセスをカスタマイズしました。

— 後から追加した機能はありますか?

T氏:コストをかけずにコンテンツマーケティングを強化したかったので、自社でキャンペーン用のLP(ランディングページ)が作成できるようCMS(知識がなくても更新できるツール)を組み込んでもらいました。いま、CMSを利用してひと月に少なくても1回、多くて3回、何かしらの販促活動を自分たちで行っています。LPの制作を外注していたら、ここまで頻繁にキャンペーンはやれなかったでしょうね。

梨木:お役に立てて嬉しいです。そう言えば、CMSを組み込むタイミングで、VALUE KITデザインというテンプレートを使ってサイトデザインの改修もしましたね。

T氏:これがとにかくコスパが良くて、早く仕上がって、驚かされました。

パートナーとして手を取り合い、事業をスケールさせていく

— 今後の展開についてお聞かせください。

T氏:いま、「選べるe-GIFT」は選択型デジタルギフト市場の中で、一定の存在感を示していると自負しています。今後は、他社を突き放すくらいに、シェアを拡大していけたら良いですね。

O氏:そうですね。このデジタルギフト事業はここ数年、右肩上がりに成長し、会社からはさらなる成長が期待されています。よって、ヒト・モノ・カネを含めた投資をして、事業を大きくスケールしたいと考えています。

梨木:私どもとしましては、Tさん、Oさんと目線を合わせて、今後も「選べるe-GIFT」に必要な機能をしっかりと作り込み、安定運用させていきます。また、全日空商事さんとのお付き合いを通して、VALUE KITの会員、決済、セキュリティの機能をさらに強化することができましたので、より一層貢献していきたいと考えています。

— サイバーウェーブにもっとこうしてほしい!ということはありますか?

T氏:仕方がないことではありますが、6年もやっていると担当者が変わることがあり、そんなときに私たちのサービスに対してなるべく早く理解を深めてもらえるとありがたいです。たとえば、いくつもの不正対策の機能がなぜ存在するのか?デジタルギフト市場がどんなリスクをはらんでいるのか?などをあらかじめ認識しておいてもらえると、改修や機能追加のときにお互い建設的な意見を言い合えるのではないでしょうか。

梨木:おっしゃるとおりです。担当者をアサインするときに引き継ぎはもちろんですが、御社のビジネスや市場をしっかり勉強する機会を設けます。

— サイバーウェーブに依頼していかがでしたか?

T氏:小回りがすごく効いて、いろいろ細かく対応してもらい助かっています。サイバーウェーブさんとは受託・委託の関係というよりは、ビジネスパートナーとしてこれからも一緒に事業をスケールさせていけたらいいですね。

O氏:お互いに忌憚のない意見を言えるいい関係性になっていると思います。引き続きよろしくお願いします。共にチャレンジしていきましょう!

梨木:こちらこそ、よろしくお願いいたします。私たちは、システム開発のプロフェッショナルとして尽力し続けます。ビジネスはもちろん、この前の新年会のようにまた楽しい時間も設けましょうね!

— ありがとうございました。

(取材: 2023年2月)