文筆業のカテゴリーの中に「ライター」という職業があります。ライターという職業を聞いたことがない人は、ほとんどいないでしょう。
しかし、ライターは「何を創っているのか」が曖昧な職業です。作家は物語、コラムニストはコラム、エッセイストはエッセイのように、他の文筆業は名前から活動が読み取れます。
名前から活動を読み取れないライターは、一体どのような職業なのでしょうか。ライターとは、いわゆる「コンテンツ」を創る職業です。
この記事では、古賀史健著『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』を要約し、ライターとは何か、どうあるべきかを解説します。
出典:https://www.amazon.co.jp/dp/4478112746
サイバーウェーブでは「スキルアップ支援制度」として、社員が自己研鑽のための書籍購入を補助する制度があります。『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』は、スキルアップ支援制度を利用して手にしました。
ライターに求められる機能
ライターとは、いわゆる「コンテンツ」を創る職業です。本文で繰り返される「コンテンツ」とは、以下のようなものを指します。
- イベントレポート
- グルメレポート
- プレスリリース記事
- インタビュー記事
- 対談記事
- 何かの解説記事
- 書籍の原稿
コンテンツの定義は、読者が「役に立った!」や「面白かった!」などの感想を抱き、購買などの行動に繋がる読み物という解釈で良いでしょう。
コンテンツを創るライターに求められる機能は、以下の3つです。
- 録音機
- 拡声器
- 翻訳機
本文で繰り返される「取材者としてのライター」とは、上記の3つを兼ね備えた存在だと解釈できます。
録音機
ライターに求められる機能の1つ目は「録音機」です。言葉とは、発した瞬間から消えていくもの。
ライターは、消えてしまう言葉に込められた思いや情報を記録します。録音機としてのライターは、ただ記録して終わりではありません。
記録した言葉からノイズを消したり、読みやすく整えたりする作業も必要です。
拡声器
ライターに求められる機能の2つ目は「拡声器」です。世の中には、声の小ささゆえに認知されていなかったり、誤解されたりしている人々がいます。
声の小さい人々の活動を遠くまで届けることができたら、世界を変えられるかもしれません。ライターは、小さな声で語られた言葉を大きな声に変換する拡声器なのです。
ライターが一歩間違えると、語り手の声とはかけ離れた騒音になってしまいます。拡声器としてのライターは、小さな声を原型に近い形で遠くまで届けなければなりません。
翻訳機
ライターに求められる機能の3つ目は「翻訳機」です。翻訳機としての分かりやすい例は、以下の2つが挙げられます。
- 話し言葉を書き言葉に
- 専門用語を一般用語に
著者はさらに深掘りし、以下の2つも翻訳だとしていました。
- 漠然とした感情を言語化する
- 自分の思いを誰かに伝える
翻訳機としてのライターは「正しさ」と「分かりやすさ」を兼ね備えた存在です。正しい翻訳なしでは録音機になれず、分かりやすい翻訳なしでは拡声器になれません。
著者は「書くこととは翻訳することであり、翻訳はライターの中核機能なのだ」と主張しています。
本を読むように「世界」を読む
取材者としてのライターが目指す先は、本を読むように世界を読むことです。本文で繰り返される「読む」とは「観察」と言い換えられるでしょう。
世界を読むとは、日常の中で多くのことを感じて問いを立て、自分の言葉で答えを出す過程を指します。客観的な正解を求めて「解く」のではなく、個人の主観で世界を「考察」するのです。
- 活字を読む
- 映像を読む
- 広告を読む
- 音楽を読む
- 人々の声を読む
著者は「優れた書き手たちは、ひとりの例外もなく優れた取材者である」と書いていました。優れた書き手たちは、活字に触れずとも「本ではないもの」への読書習慣を持っています。
作家や映画監督、コピーライターなど、ジャンルは違えど原則は変わりません。日常の出来事に対して、自分なりに「考察」することを意識してみましょう。
情報をキャッチせず「ジャッジ」する
観察としての「読む」という行為は、能動的な行為です。ページ全体をぼんやりと眺めているだけでは、文字を読むことはできません。
「文字を追う」という意識を持ったとき、初めて文字に焦点が当たります。ぼんやりと世界を見ているだけでは、何も「読む」ことはできないのです。
面白い映画を見たあとに「あー、面白かった」と背伸びをしたとしましょう。「あー、面白かった」と背伸びをする自分は、その映画を「読んだ」とはいえません。
映画を「読む」とは、作り手の意図や仕掛けを考え、自分なりに考察することを指します。能動的になって初めて「鑑賞」は「読む」へと昇華するのです。
「お勉強」としての読書をやめる
著者は「乱読家であることは、ライターの大切な素養だ」と主張していました。ビジネスの世界で語られる「読書」の多くは、以下の2つに収束します。
- 役に立った
- 役に立たなかった
結論を急いだ拾い読みは「読書」ではなく「検索」に近い行為です。検索の量をどれだけ増やしても「読む」という能力は鍛えられません。
検索型の読書をやめる方法は、目的を捨てて、ただ本の世界を楽しむこと。情報収集という目的を捨てて初めて、読書=お勉強という意識を捨てられます。
本文には「お勉強の意識を捨てることで、内容を純粋に楽しんだり、表現の巧拙に目が行ったりする」と書かれていました。
いざ乱読を始めようとしても、本選びに迷うでしょう。著者は「2人以上の『信頼する知人』から薦められた本は、必ず読む」というルールをおすすめしています。
自分の興味関心に頼らないことで、人は守備範囲の外にある本や作家に出会えるのです。たまには、情報収集を忘れて本の世界に没頭する読書をしてみましょう。
情報収集が目的の読書とは違った、奥深い本の世界に出会えるかもしれません。
読書体力と自分を変える勇気
乱読には「読書体力」が欠かせません。読書体力とは、難しい本を最後まで読み通す精神力です。
「読書体力が衰えて長い本を通読できなくなった」という言葉を聞いたことがあるでしょう。しかし、読書体力の衰えの本質は、体力の衰えではありません。
著者が主張する読書体力の衰えの本質は、心の可塑性の低下です。知識をインプットして新しい自分になることを恐れたとき、人の読書体力は衰えはじめます。
本文には「自分の価値観が揺さぶられることを恐れているから、人は簡単な本に手を伸ばす」と書かれていました。
読書体力は、ライターにとって必要不可欠な要素です。価値観や知識を更新しない取材者は、入ってくる情報を他人事として処理してしまいます。
他人事として処理した情報で原稿を書いても、面白い原稿にはなりません。乱読の第一歩は、価値観や知識の更新を恐れない勇気を持つところから始めましょう。
あなたの文章がつまらない理由
著者は、面白い文章を書く人の例として「画家」を挙げています。なぜ、ライターの話に画家が出てくるのでしょうか。
一流の画家たちの共通点は、対象を隅々まで観察している「目」です。一流の画家たちはモデルを隅々まで観察しているため、作品をすぐに描き上げず、飽きることもありません。
しかし、三流の画家たちは、作品をすぐに描き上げてしまいます。作品をすぐに描き上げる三流の画家たちは、筆が速いのではありません。
三流の画家たちには、一流の画家たちに見えているものが見えていないのです。著者は「一流のライターになるためには、読む力を鍛えてこそだ」と主張しています。
「わかったつもり」で文章を書かないためには、取材対象を隅々まで観察しなければなりません。原稿を書き終えたあとは、自分の原稿に点数をつけましょう。
三流のライターたちは、40点の原稿にぼんやりと80点をつけています。読者としての自分が甘いため、40点の原稿を正確に評価できないのです。
自分の原稿を正確に評価するためには、読者としての自分を厳しくしなければなりません。読者としての自分を厳しくするためには、取材対象への深い理解が求められます。
良い原稿を書く第一歩は、表現テクニックよりも取材対象への理解力が重要なのです。
書くのではなく翻訳する
著者は「文章の書き方を学ぶことは、翻訳の仕方を学ぶことだ」と主張しています。著者の言う「翻訳」とは、目に見えない以下の3つを丁寧に言語化することです。
- 思考
- 感情
- 情報
ライターが書く文章は、目に見えない素材を書き起こしたもの。ライターは、自分が取材したことを丁寧に翻訳(言語化)しなければなりません。
翻訳という名の言語化能力を鍛える方法として、著者は「感情の揺れを言葉にする習慣」を挙げています。
日常生活の喜怒哀楽や心が震えたときに、湧き上がった感情を翻訳(言語化)するのです。言語化した感情を視覚化したり、誰かに伝えたりする必要はありません。
しかし、視覚化はアウトプットの練習になるため、できるだけ視覚化するべきだと感じました。内省だけでも言語化の練習としては十分なため、ぜひ感情の翻訳を習慣化してみましょう。
推敲は自分への取材
著者は、推敲の本質を「過去の自分への取材」だと主張しています。原稿を書いた過去の自分に対して、以下のような厳しい問いを容赦なくぶつけるのです。
- 何を考えて書いたのか
- なぜこう書いたのか
- このエピソードは必要か
原稿を読んで不要だと判断した箇所には、ばっさりとハサミを入れましょう。不要な箇所を削るだけではなく、文章の構成を組み替えたり加筆修正したりもします。
推敲とは、単なる読み返しや書き直しではありません。ライターが行う推敲は、映画における編集に近い作業です。
映画における編集とは、フィルムから不要な箇所を削り、つなぎ合わせて再構築する作業を指します。撮影の現場に立たない映画編集者は、現場の苦労や思いが分かりません。
苦労の結晶であるフィルムにハサミを入れる作業は、無慈悲だと感じるでしょう。しかし、本当に必要なカットだけに絞って再構築する作業は、フラットな立場にしかできない仕事です。
原稿をコンテンツへと昇華させるためには、必ず推敲を挟まなければなりません。自分がどれだけ頑張って書いた箇所でも、容赦なくハサミを入れる無慈悲な態度が求められます。
自分の原稿を自分から引き剥がすためには、以下の2つを試してみましょう。
- 原稿を寝かせる
- 原稿の見た目を変える
「原稿を寝かせる」とは、文字通り一晩寝かせてから読み返す方法です。3日以上がベストではあるものの、一晩寝かせるだけでも効果はあります。
原稿を正確に評価するためには、十分な睡眠も欠かせません。原稿を読み返すときは、十分な睡眠をとってから挑みましょう。
「原稿の見た目を変える」とは、縦書き横書きやフォントを変える方法です。シンプルな方法ではあるものの、見た目を変えるだけで原稿の印象はガラッと変わります。
ライターはテクニック以上にマインドが重要
ライターの機能や心構えを中心に『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』を解説しました。ライターには、3つの機能が求められています。
- 録音機
- 拡声器
- 翻訳機
上記の3つを達成するためには、取材対象への理解力が欠かせません。取材対象への理解力を高めるためには、世界を読む力を鍛えましょう。
世界を読むとは、日常の中で多くのことを感じ、問いを立て、自分の言葉で答えを出す過程を指します。
世界を読むときは、ぼんやりと眺めるのではなく、対象にしっかりと焦点を当てなければなりません。世界を読む力を鍛えるためには、乱読がおすすめです。
読書=お勉強の意識を捨てることで、本の世界や文章の巧拙に意識が向きます。乱読の第一歩は、価値観や知識の更新を恐れない勇気を持つところから始めましょう。
原稿をコンテンツへと昇華させるためには、推敲が欠かせません。推敲では、自分で書いた原稿に容赦なくハサミを入れる覚悟が必要です。原稿を寝かせたり見た目を変えたりしながら、上手に距離を置きましょう。
『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』には、他の文章術本とは違う印象を受けました。『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』は、テクニック以上にマインド面を重視しています。
テクニックも重要ではあるものの、根底にあるマインドはもっと重要です。値段も¥3,300と、決して安くはありません。
しかし、マインドが学べる文章術本は珍しいため、¥3,300を払う価値はあります。著者は、アドラー心理学を解説したベストセラー『嫌われる勇気』を執筆した古賀史健氏です。
ベストセラー作家の頭の中に興味がある方は、ぜひ『取材・執筆・推敲 書く人の教科書』を手にとってみてはいかがでしょうか。
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