CRMは次第に普及してきているものの、コストがかかるため導入を見合わせている企業も見られます。
そんななかで、低コストのオープンソース型CRMを検討する企業もあるでしょう。
オープンソース型CRMには製品版CRMとは異なる特徴があります。そのメリットやデメリットをよく理解して、選定することが重要です。
ここではオープンソース型CRMの特徴や選定のポイントをご紹介します。
オープンソース型CRMとは何か
オープンソース型CRMとは、オープンソースで開発されているCRMです。
CRM、オープンソース型CRMの順に詳しくご説明します。
CRMとは何か
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、日本では通常「顧客関係管理」と訳されます。
CRMを使えば、これまでの購買履歴、志向、ニーズ、予算など、顧客に関するすべての情報を一元的に管理することが可能です。それをもとにして、メールマガジンや個別営業、展示会への招待など、各顧客に最適化されたアプローチをシステマティックに行うことができます。
CRMを使って顧客と会社が1対1の関係を築いて適切なアプローチを行うことで、より長い付き合いや大きな売り上げにつなげることも可能です。またCRMがあれば、担当者だけでなくすべての営業がそれぞれの顧客に最適な対応を行うことができ、LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が企業にもたらす価値の総額)や顧客満足度が向上します。
CRMは既存顧客のサポートはもちろん、見込み顧客へのアプローチにも利用できます。
オープンソース型CRMとは何か
オープンソース型CRMとは、OSS(オープンソースソフトウエア)で作成されたCRMシステムです。
OSSはソースコードがインターネットで完全に公開されているソフトウエアで、商用利用もカスタマイズも自由に行えます。
オープンソース型CRMには、通常のCRMとは異なる以下のような特徴があります。
- ライセンスフリー
インターネット上に公開されていて自由に使うことができます。ライセンス料も必要ありません。 - カスタマイズ自由
ソースコードごとに公開されているので、技術力さえあれば、自由にカスタマイズできます。 - 基本的な機能では有料版に負けない
無料で提供されていますが、基本的な機能はそろっています。
ただし、有料版に比べて、ユーザー数やデータ容量が制限されていることもあるので注意が必要です。
オープンソース型CRMの例
オープンソースで提供されている無料のCRMをいくつかご紹介します。
- SugarCRM
米国のSugarCRM社が開発したCRMソフトウエア。
顧客管理だけでなく、営業サポートやグループウエアなど、さまざまな機能があります。
有料版に比べて機能が限定されており、日本語環境に対応しているのは有料版のみです。 - v tiger CRM
v tiger CRMはSugarCRM1.0をベースに開発されているオープンソース型CRM。
インドのv tiger社が開発の中心になっていますが、OSSなのでユーザーコミュニティも盛んです。すべての機能がオープンソースで提供されています。英語のソフトウエアですが日本語化されており、日本語での利用も可能です。
オンプレミスでもクラウドでも利用できます。 - F-Revo CRM
v tiger CRMをベースにして、日本企業向けにカスタマイズしたオープンソース型CRM。
カスタマイズを行ったのは、OSSの導入支援も行っているシンキングリード社です。
日本の企業文化に合わせてカスタマイズされており、導入段階から日本語で利用できます。
CRMが重要となった背景
近年はCRMが盛んに利用されていますが、それには次のような背景があります。
- 市場環境の変化
バブル期までは品質と価格が重視されていましたが、不況と少子高齢化によって市場が縮小したうえ海外製品が簡単に手に入るようになり、良い製品を低価格で提供しても新規顧客を獲得できなくなりました。
そのため、既存顧客へのフォローといった顧客対応が重視されるようになるというように、製品や企業中心のマーケティングから、顧客中心のマーケティングへ移行したのです。 - インターネットの普及
インターネットの普及により、製品の情報が簡単に手に入るようになりました。
買い物の前には、検索してほかの店と価格を比べたり類似商品と比較したりするのが当たり前になり、商品や企業に対する「口コミ」の影響によって商品の売れ行きが左右される時代となりました。
これらの変化に対応し、既存顧客の維持や新規顧客の獲得に役立つのがCRMなのです。
オープンソース型CRMのメリット・デメリット
オープンソース型CRMには次のようなメリットやデメリットがあります。
メリット
- 低コスト
サーバーや回線などのハードウエアやインフラについては別途費用がかかりますが、オープンソース型CRM自体は無料です。また、カスタマイズも社内でできれば、費用はかかりません。 - カスタマイズも自由
ソースコードをカスタマイズして機能を追加したり保守作業を行ったりすることができます。
カスタマイズによって機能を追加するだけでなく、不要な機能を抜くことも可能です。
それにより、全体の動作を軽くしたり使いやすくしたりすることができます。 - ユーザーコミュニティの充実
CRMに限りませんが、OSSはユーザーコミュニティが充実しています。
最新の情報をキャッチアップできれば、有料版のソフトウエアよりも充実した情報が入手できます。 - 長期間の保守が可能
ソースコードが公開されているため、技術力があれば、自社で長期間のメンテナンスが可能です。
自社でメンテナンスできれば、ベンダーの更新停止やサポート打ち切りを気にする必要がなくなります。 - 導入やサポートにはベンダーも利用可能
オープンソース型CRMの導入と活用にはある程度の技術力が必須です。
自社では難しいという場合は、運用中のサポートや更新作業などをカバーしてくれるベンダーも存在します。
デメリット
- 技術力のあるスタッフが必要
導入や運用のためには、技術力のあるシステム担当者が必要です。
日常的な情報のキャッチアップも必要で、製品版の運用よりもシステム担当者には負担が大きくなります。 - カスタマイズが必要
そのまま使えることはほとんどなく、自社に合わせたカスタマイズが不可欠です。 - 保証がない場合が多い
保証はなく、カスタマイズしたシステムにトラブルがあっても、自社で対応する必要があります。
セキュリティ面でも自社で対策を行う必要があります。 - 日本語化されていない部分が多い
オープンソース型CRMは、さまざまな国で開発されています。
他国で開発されたものは、まずはカスタマイズで日本語を使えるようにしなくてはなりません。
ドキュメントやユーザーコミュニティもほとんどが英語なので、抵抗があるユーザーもいるかもしれません。 - ベンダーを利用すれば費用がかかる
社内に技術力のあるスタッフがいない場合はベンダーを利用することになり、別途費用がかかります。
サポートやカスタマイズ部分が多ければ、結果的に高い費用がかかったというケースも考えられますので、導入前には、トータルでの費用を把握しておく必要があります。
オープンソース型CRM選定のポイント
オープンソース型CRMにはさまざまな種類があります。
導入するオープンソース型CRMの種類によって、導入効果も大きく異なってきます。
選定するときには、次のようなポイントをチェックしましょう。
必要な機能はそろっているか
カスタマイズしなくても、求めている機能や要件をある程度満たしているか、既存のシステムとうまく連携できるかといったことをチェックします。
自社で運用可能か
自社にどの程度技術力のあるスタッフがいるかをチェックしましょう。
セキュリティ対策は十分か
CRMには企業の重要な機密データが集まるため、セキュリティ対策は最重要課題のひとつです。
ソースコードがオープンにされているということは、セキュリティホールもオープンになっているということです。
できるだけセキュリティの強化されたオープンソース型CRMを選定し、さらに独自にセキュリティ対策を行いましょう。
また、常に最新の情報を積極的に入手していく必要があります。
コミュニティは活発か
最新の情報をキャッチアップするためには、情報交換が盛んなユーザーコミュニティがあるオープンソース型CRMを選ぶ必要があります。
最新情報が入手できるかどうかは、機能追加やセキュリティ対策など、安定した運用にもつながるからです。
オープンソース型CRMでも導入前の選定がポイントになる
オープンソース型CRMは低コストですが、当然デメリットも存在します。
オープンソースならではの特徴をよく理解し、自社で活用できるかどうかをしっかり見極め、導入を検討しましょう。また、オープンソース型CRMにも製品版CRMと同様多様なツールがあります。
それぞれの特徴を理解して自社に合ったものを選定することが大切です。
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