AIとの対話を、個室から共有スペースへ。サイバーウェーブが「AIセッションズ」を作った理由

転職先を探すエンジニアなら、「AIとの向き合い方」が気になるのではないでしょうか。会社としてAIとどのように向き合っているかという姿勢は、あなたの学びとキャリアの伸びしろを左右するものです。サイバーウェーブでは、AI活用を進めるなかで全社員のAIとの対話を可視化・蓄積する独自ツール「AIセッションズ」を自社で開発しました。この記事では、AIセッションズがどんなツールなのか、そしてそれを支える当社のAI活用環境について代表:梨木より紹介します。

AIと仕事をするのが当たり前になったサイバーウェーブの抱えていた問題

Claude Codeを全社で導入してから、当社ではエンジニアだけでなく開発事務・営業事務などさまざまな職種のメンバーがAIと対話しながら仕事を進めるのが当たり前になりました。会社の年度方針である「AIと磨く、VK(VALUE KIT)の価値」のとおり、AIは当社にとって「使うかどうか」を議論する段階をとっくに過ぎた存在です。

しかし、一つ気になっていることがありました。SlackやAsana等のツールでのやりとりなら、誰が何を話しているかは共有しなくても自然と周りから見えます。ところが、AIとの対話は違いました。本人が意図的に共有しない限り、どのようなプロンプトを投げて試行錯誤して、何を得ているのかが誰にも見えません。まるで個室にこもって、AIとふたりきりでおしゃべりしているような状態です。ひとりひとりが黙々とAIと向き合っているだけで、その様子は他の誰にも見えていなかったのです。

しかも、Claude Codeの場合その対話は時間が経つと本人ですら振り返れなくなります。過去のプロンプトや成果を探して現在の仕事に活かそうとしても、ターミナルの奥に埋もれてブラックボックス化してしまう。個人の中にノウハウが眠ったまま、組織の資産になりません。AIと仕事をするのが当たり前になった以上、この状態を放置するのはもったいないと感じていました。

「AIセッションズ」とは何か ― 対話を見える化し、資産に変える仕組み

そこで作ったのが「AIセッションズ」です。全社員のAIとの対話ログを可視化・蓄積・検索できるようにする社内ツールで、機能自体はとてもシンプルです。誰が・いつ・どんなセッション(AIと交わした一連の対話のまとまり)を行ったかを一覧化し、URL一つでその中身を開いて読めるようにしました。

私はよく「AIセッションズは、過去のAIとのおしゃべりの記録なんです」と説明しています。ただ、見える化して終わりではありません。AIには時間の概念も過去の記憶もなく、いわば毎回「記憶喪失」のような状態で私たちと向き合っています。ですが、AIセッションズに蓄積された過去のやりとりを読み込ませれば、AIに文脈を教え直すこともできます。以前のセッションをそのまま読み込ませれば、時間が空いてもAIは続きから会話を再開できるのです。AIと何を話したかという記録を、人だけでなくAI自身の記憶を補うためにも使える仕組みにしました。

サイバーウェーブ株式会社には、AI活用のルールやナレッジを蓄積して全プロジェクトに配信する「dotclaude」という社内基盤もあります。dotclaudeが「AIに何を教えるか」という規範を蓄積する仕組みだとすれば、AIセッションズは「人がAIと何を話したか」という記録をいつでも参照できるようにし、みんなで共有するものです。役割ははっきり分かれています。

実際に、あるメンバーに自分のAIとの対話を見せたとき、「そのような方法があるのか!」と驚かれたことがありました。別のメンバーからも「他のメンバーがどのようなプロンプトを使っているのか知りたい」「AIへのプロンプトをどう工夫すればいいのか知りたい」という声を聞いていました。お互いの対話を見せ合って学び合えれば、その疑問は解消されるはずです。

私自身も、他のメンバーがAIとどう向き合っているかを見てみたいという気持ちがありました。AIは対話の仕方次第で、引き出せる答えの質がまるで変わってきます。それなら尚更、上手なやりとりの仕方はみんなで共有した方がいい。そう思ったのが、AIセッションズの出発点です。

思いついたらすぐ形にする。スピード感を持ってAIセッションズを生み出した

当たり前ですが、Claude Code自体に他のメンバーのプロンプトを閲覧・共有するような機能はありません。オープンソースで似たようなツールがないか探しましたが、チームでの共有まで実現している例は見当たりませんでした。それなら自分で作ろうと、Claude Codeそのものと対話しながら開発を進めました。

当社が大事にしているのは、AIを「指示を待つだけのアシスタント」ではなく「共に手を動かす存在」として扱う姿勢です。AIセッションズはまさにその思想を体現するツールになりました。

着想したのは3月1日。最初はAIセッションズによって組織全体を俯瞰できるような大がかりな構造を思い描いていましたが、それでは形になるまでに時間がかかりすぎます。途中で方針を変え、まずAIとの会話をHTMLに書き出すだけのシンプルな仕組みから作り、そこにチームで共有できる仕組みを少しずつ足していくボトムアップのやり方に切り替えました。だんだんと形にしていき、6月14日には基盤を1日で組み上げるところまでたどり着きました。思いついてから形にするまでのスピード感は、当社とAIの向き合い方を一番よく表していると思います。

現場で起きている変化 ― 学習・引き継ぎ・フィードバックに活用

AIセッションズを導入してから、現場ではいくつもの良い変化が起きています。

あるエンジニアは「過去に自分がやったことを探すのに便利」と話していました。AIとの対話をプロジェクトをまたいで検索できるので、自分の作業履歴を掘り返すだけでなく、他のメンバーが同じような課題をどう解決したかを探すのにも役立っているようです。

別のメンバーは、自分が解決しきれなかった課題をAIセッションズのログのURLを添えて他のメンバーに引き継ぎました。それまでの経緯をAIとのやりとりごと丸ごと渡せるので、引き継いだ相手は経緯を理解した上でスムーズに続きに取り掛かることができました。口頭やドキュメントでの引き継ぎとは違う、AI時代ならではの新しいタスクの引き継ぎ方だと感じています。

最近では、AIセッションズをとおして誰がどんな会話をAIとしているのかもリアルタイムで見えるようになりました。開発サーバーだけでなく個人のパソコンやスマートフォンなども連携すれば、AIと交わした対話をすべて一箇所に集約できます(開発サーバー以外の端末との連携は任意です)。正直、AIセッションズでここまでできるとは思っていませんでした。

もちろん、AIセッションズの活用は強制していません。AIセッションズの内容を人事評価に利用することもありません。ただ、Claude Codeが仕事に必要不可欠な状況になりつつある中で、他のメンバーや業務の状況が気になったらすぐにチェックできる。AIセッションズも仕事に欠かせない存在として浸透しつつあるのではないでしょうか。ちなみにデータをみると、16名のメンバーが週に1回以上利用していて、エンジニアでないメンバーも12名が利用しているというデータが存在します。チームで一緒に仕事をするなら、メンバーと話をしないと物事が進まないのと同じで、AIと仕事をするのも自然と当たり前になっていくはずだと思っています。

また、私がAIセッションズを活用して一番実現したかったのは「スキルや経験を問わずAIを活用して仕事を進められるよう、個々人にフィードバックしたい」ということです。AIをうまく使えるかどうかを個人任せにしたくありませんでした。AIセッションズでこれまでの会話を把握し、より良いプロンプトが出せるようフィードバックできるようにもなりました。

実際に運用してみると、エンジニアだけでなく様々な部署・メンバーがそれぞれのやり方でClaude CodeやAIセッションズを活用していて、私自身も「あんなことができるのか」という発見があります。

これからの展望と、AIと働くということ

AIセッションズはすでに完成されたツールではないと考えています。細かい改善を積み重ねながらこれからも整備を続けていきたいです。将来的にはオープンソースとして公開し、お客様にも紹介することを検討しています。お客様の社内でも同じようにAI活用の知見が共有される環境が広がれば、私たちが培ってきたものを還元することにつながります。

AIセッションズの整備だけでなく、社内サーバーの構築やオープンウェイトモデルの活用も進めていて、コストを抑えながら安全かつ継続的にAI環境へ投資できる体制を整えています。

AIと働く力は、会社の仕組みが育てる

AIをうまく使えるかどうかは、個人のセンスや裁量任せにするものではないとサイバーウェーブではとらえています。

AIセッションズもdotclaudeも、AI活用を個人の裁量任せにしないための仕組みです。ルールと基盤を会社が整えているからこそ、誰もが安心してAIと向き合い、力を伸ばせます。この環境でAI活用力を磨き、エンジニアとしてステップアップしたい方はサイバーウェーブ株式会社で働いてみませんか?ひとりでもくもくと向き合うのではなく、入社初日から先輩たちのAIセッションを参考にしながらスキルアップを狙える環境です。対応に詰まったら「同じようなエラーの例」を検索すれば、先輩たちの試行錯誤をもとに課題解決ができます。着実にあなたのスキルアップにつながるようなAI環境をご用意します!

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