ここ最近、注目を浴びているサブスクリプションというと、一定の金額を支払うことで音楽や映画などを自由に楽しめるものといったイメージがあるのではないでしょうか? しかし実際には、そういったエンターテインメント系のほかにも、車やファッション、雑誌、食品など多岐にわたる業種でサブスクリプションは展開されています。今回は、サブスクリプションとはどういったサービスを指すものなのか、今注目を浴びている理由、ビジネスとして成功させるポイント、将来性などについてお伝えします。
さまざまな業種で展開されるサブスクリプションビジネスの今
サブスクリプション(subscription)はもともと新聞や雑誌などを「定期購読」するという意味の英語です。しかし、現在注目されているサブスクリプションは、「商品やサービスを代金を支払って所有するのではなく、使用料を支払って一定期間利用する権利を買う」ビジネスモデルを指します。特徴は、新聞や雑誌のように特定の商品ではなく、顧客が好きな商品やサービスを選択できること、また、商品を所有するのではなく、使用料と引き換えに利用する方式であることです。
このビジネスモデルが注目されている背景には、人々の消費志向が所有から「利用」や「体験」へと変化していることがあります。
代表的なサブスクリプションサービス
現在展開されている主なサブスクリプションサービスを紹介します。
- 音楽
Spotify、Amazon Music Unlimited、LINE MUSIC、AWA、Apple Musicなどさまざまなサービスがあります。多くのサービスには有料のプランに加えて制限付きの無料プランもあり、気軽に数千万曲もの音楽を楽しめます。 - 動画
Amazon Prime Video、Hulu、Netflix、U-NEXT、dTVなど音楽同様多くのサービスがあります。オリジナル動画に力を入れているサービスも多く、Netflix制作の映画は2020年のアカデミー賞、24部門でノミネートされました。 - 自動車
テレビコマーシャルも放映され認知度が高まっているのが自動車のサブスクリプションサービスで、KINTO、NORELなどがあります。月額は車種によって異なりますが、メンテナンスや任意保険、税金といった諸経費も含まれているものが多く、余計な手間がかからないのも人気の理由です。 - ファッション
ファッションには流行があり、去年購入したものでも今年になればもう使えないといったものも少なくありません。そういった点で、ファッションはサブスクリプションと非常に相性の良い商材といえます。また、高級ブランドのバッグを無理のない月額料金で楽しめるなどもサブスクリプションのメリット。代表的なものとして、メチャカリ、ラクサス、エアークローゼットなどがあります。 - 雑誌
従来の雑誌定期購読とは異なり、数百冊の雑誌が読み放題になる形です。スマートフォンやタブレットで閲覧できることから、荷物にもならず、電車の待ち時間や夜寝る前などに気軽に楽しむことができます。楽天マガジンやdマガジン、Tマガジンなどが知られています。
ほかにも、おもちゃや絵本、ドリンクなどさまざまな商材がサブスクリプションサービスとして提供されています。
サブスクリプションビジネスを導入することのメリット
従来なかった新たな形のビジネスであるサブスクリプションには、次のようなメリットがあります。
- 消費者の利用障壁を下げられる
高級車やファッションなどの商材を格安な月額で利用できるため、消費者の利用障壁を下げることが可能です。例えば、自動車のサブスクリプションサービス、KINTOでは、高級車レクサスを月7万円代からの定額で利用でき、3年ごとに新しいものに乗り換えることができます。また、バッグのサブスクリプションサービス、ラクサスではエルメス、ルイ・ヴィトン、シャネル、プラダといった高級ブランドのバッグを月額6,800円で自由に利用できます。 - 継続的な売上が期待できる
サブスクリプションは会員制のビジネスのため、将来的な売上をある程度予測できるのも大きなメリットです。また、ユーザーの購入履歴に応じてサービスを充実させたり手軽な料金プランを増やしたりと、解約させない工夫がしやすく、継続的な利益確保が期待できます。 - アイデア次第でさまざまなサービスで利用可能
音楽や動画といったデジタルコンテンツが主流だったサブスクリプションですが、最近ではさまざまな業種が参入し、活況を呈するようになっています。これからもアイデア次第で、いままでにない新たな商材のサブスクリプションビジネスを始めることが可能です。 - 商品・サービス改善のヒントが増える
サブスクリプションにすることで、これまで以上に多くの消費者が自社の商品・サービスを利用してくれるようになるため、商品の改善点のヒントも多く得られるようになります。得られた情報を新商品開発に生かすことができれば、継続率の増加、解約率の低減につながります。
サブスクリプションビジネスを成功させるためのポイント
では実際にサブスクリプションビジネスを始める場合、何に注意すればメリットを最大限に享受でき、成功につながっていくのでしょうか。それには次のふたつのポイントがあります。
1. ユーザーファースト
サブスクリプションの導入に失敗してしまう最大の理由は、企業側の視点で提供する商品やサービスを絞ってしまうことです。利用者側から見ればサブスクリプションに登録するメリットは、多くのもののなかから気に入ったものを選択できることです。企業側の都合で選択肢に制限をかけてしまうと、当然、利用者の気持ちは離れていってしまいます。サブスクリプションでは、常に利用者の目線に立って利用者の希望を最優先し、価値を感じてもらえる商品・サービスの提供を続けていくことが重要です。
2. システムの使いやすさ
サブスクリプションは多くの場合、インターネット上でサービスの提供を行います。そのため、システムが使いやすいかどうかも成功の重要なポイントです。レコメンドやほかの利用者の声など新たな発見を促すコンテンツを用意するとよいでしょう。また、登録、退会、商品、サービスの検索、利用方法の案内など、利用者が知りたい情報がすぐに見つかるように、常に利用者側の視点で改善を続けていくことが求められます。
これからサブスクリプションビジネスを始める場合は、提供する商品やサービス内容に加え、ビジネスを効率的に稼働させるシステムについても十分に検討することが大切です。
サブスクリプションの市場規模から見る将来性
矢野経済研究所の調べによると、2018年度のサブスクリプションサービス国内市場規模(ファッション系定期宅配、ファッションサービス、食品系定期宅配、娯楽など8市場の合計)は、消費者支払額ベースで5,627億3,600万円でした。将来の展望としては、2023年度には8,623億5,000万円になると予測されています。
この数値は、サブスクリプションビジネスのさらなる可能性を示唆しています。サブスクリプションに参入する企業はこれからも増加していくと考えられます。サブスクリプションビジネスを考えているのであれば、少しでも早く動き出すことで、より多くの先行者利益を享受できると考えられるのです。
常に利用者の視点でサービス改善を続けることが重要
消費者の志向が所有から利用へと移りつつある現在の状況に対応するサービスとして、サブスクリプションは、大きな注目を浴びています。しかし、サブスクリプション方式にさえすればビジネスが成功するわけではありません。紹介したような、使いやすいシステムの構築も含めて常にユーザーファーストで、利用者のニーズや利便性を最優先したサービスの提供を行っていくことが重要です。