新しくサブスクリプションサービスが公開されると、WebニュースやSNSなどで話題になることも多く、サービスと企業の認知度が同時に上がることも少なくありません。今回は、注目を集めているサブスクリプションサービスを始める2つの導入方法と3つのシステム開発手法をご紹介します。
サブスクリプションサービスを導入するには
どのような商材でもサブスクリプションサービスができるわけではありません。サブスクリプションサービスを導入するには、商品やサービスといった商材にも条件があります。
サブスクリプションサービスを導入する条件やコンセプト、方法などについて見ていきます。
導入条件
サブスクリプションサービスに向くのは、次のような条件を満たす商材です。
- 継続利用するタイプの商材であること
- 最低でも月1回程度は利用する商材であること
1回買えば終わりの買い切りの商材とは異なり、料金を支払うのと同じ頻度で利用するような商材が、サブスクリプションサービスには向いています。つまり、上記の条件を満たしていない商材では、サブスクリプションサービスで成功することは難しいでしょう。
導入のコンセプト
サブスクリプションサービスを安定して運営するためには、顧客との継続的な関係や強いエンゲージメントが必要です。顧客との強固なつながりを実現するには、魅力的な商材やサービスプランを提供する必要があります。
では、どのようなコンセプトで商材やサービスプランを設計すればよいのでしょうか。
- サービス設計
前述のとおり、顧客に継続して、一定の頻度で利用してもらえる商材がサブスクリプションサービスには向いています。自社の商材をサブスクリプション形式で提供できるよう、サービス設計することが大切です。 - 価格設定
サブスクリプションサービスの価格は、顧客が無理なく支払うことが可能で、企業側で十分な利益が確保できる金額を設定しなければなりません。必要に応じてサービスの種類や量を変え、何種類かの料金プランを用意するのも利益確保には有効な方法です。 - 顧客とのコミュニケーション
サブスクリプションサービスでは、顧客に長期で利用してもらわなければなりません。そのためには、契約後も顧客と適切なコミュニケーションを図ることが大切です。顧客のニーズをつかみ、商材を増やしたり修正したりしてサービスを向上させる必要があります。
以上の条件を満たし、明確なコンセプトでサブスクリプションサービスに成功した事例には、Apple MusicやAmazon Primeなどが、十分な対応ができずに失敗した事例にはsuitsboxやSAKELIFEなどがあります。
詳しくは、「サブスクリプションを成功させるポイントは? 7つの事例から考えよう」をご参照ください。
2つの導入方法と3つのシステム開発手法
自社のECサイトにサブスクリプションサービスを導入するには、大きく分けて以下の2つの方法があります。
- 既存のECサイトにサブスクリプションサービスを追加する
- 新しくサブスクリプションサービス用のECサイトを開発する
いずれの場合でも、サブスクリプションサービスを実現するシステムの開発が必要です。システム開発の方法には、次の3つがあります。
- 自社開発する
- SaaSを利用する
- プラットフォームを利用する
サブスクリプションサービスを導入するための3つのシステム開発手法
前述の3つのシステム開発の方法について、詳しく見ていきましょう。
自社開発
自社開発をする場合は、スクラッチ開発と呼ばれるゼロから開発する手法が主流です。すでにECサイトを運営していてサブスクリプション機能を追加する場合も、追加部分ではスクラッチ開発が多くなります。
自社開発のメリット
自社開発には、次のようなメリットがあります。
- オーダーメイドで仕様を決められるため、自由に必要な機能を盛り込める
- 開発した記録が残るので、社内にノウハウが蓄積する
自社開発のデメリット
一方で、次のようなデメリットがあります。
- ゼロからシステムを開発するので、時間がかかる
- 機能を追加するときも、追加部分はゼロから開発するので時間がかかる
- 開発に多くの人手と時間がかかるため、費用がかかる
費用相場
実は自社開発はもっとも費用がかかる方法で、金額にして1,000万円以上の予算が必要になります。サイト全体を開発するか、サブスクリプション部分だけを開発するかなど開発する分量によって、実際の費用は大きく異なります。
開発手順
通常のシステム開発と同じで、次のような手順になります。
- 要件定義:必要な機能や予算、公開時期などを決定します。
- 設計:サイトマップやコンテンツマップを作成し、ページごとに必要な機能や仕様を決定します。
- 開発:決定した仕様にしたがってシステム開発を行います。
- データ入力:商品情報やプラン、写真などを登録します。
- 運用テスト・修正:サービス公開前に、実際に操作してテストを行い、不具合を修正します。
- 公開:正式にサービスの提供を開始します。
SaaS
SaaS(Software as a Service)とは、インターネット経由でクラウド上にあるソフトウェアから必要な機能を必要な分だけ利用できるサービスです。多くの部分はSaaSで提供されているソフトウェアを利用し、自社で開発するのは、各サービスの連携部分やSaaSで提供されていない部分のみとなります。
SaaSのメリット
SaaSを利用してのシステム開発には、次のようなメリットがあります。
- 自社開発に比べて時間やコストがかからない
- 機能の追加・修正を柔軟に行える
- 開発しなければならない部分が少ないため、社内エンジニアの負荷が軽くなる
- 開発にはSaaSを提供するベンダーのサポートを受けられる
- 自社でも開発を行う部分があるので、開発のノウハウやデータが残る
SaaSのデメリット
ただし、SaaSには次のようなデメリットもあります。
- カスタマイズ部分は開発が必要なので、ある程度の開発時間とコストがかかる
- 利用料金が継続して必要になる
- SaaSの仕様によっては、追加できない機能がある
費用相場
初期費用は数十万円から数百万円、ランニングコストは月額1万円前後が相場となっています。
開発手順
SaaSを利用したシステム開発は、次のような手順になります。
- 要件定義:必要な機能や予算、公開時期などを決定します。
- 設計:サイトマップやコンテンツマップを作成し、ページごとに必要な機能や仕様を決定します。
- ベンダーを選ぶ:SaaSのサービスを提供する会社を決定します。
- システム開発:カスタマイズや連携、機能追加などの部分を開発します。
- データ入力:商品情報やプラン、写真などを登録します。
- 運用テスト・修正:サービス公開前に、実際に操作してテストを行い、不具合を修正します。
- 公開:正式にサービスの提供を開始します。この後はベンダーからアフターフォローがあることが多いです。
プラットフォーム
プラットフォームを利用する方法です。サブスクリプション用のプラットフォームは、サブスクリプションに必要な機能や環境を一括して提供するサービスです。
プラットフォームのメリット
プラットフォームを利用してのシステム開発には、次のようなメリットがあります。
- 自社開発・SaaSに比べてコストがかからない
- 必要な機能がそろっているため、導入からサービス公開までの時間が短い
- 集客機能を持っているプラットフォームも多い
- 機能の追加・修正がしやすい
- システム部分はプラットフォームを提供するベンダーが運用してくれるので手間がかからない
プラットフォームのデメリット
ただし、プラットフォームには次のようなデメリットもあります。
- 大きなカスタマイズがしにくい
- 同じプラットフォームを利用したサービスは外観やインターフェイスなどが似てくるため、オリジナリティを出しにくい
- 利用料金が継続して必要になる
- ベンダーの都合で仕様や内容が変わるリスクがある
費用相場
初期費用は数万円から数十万円、ランニングコストも月額数万円から数十万円単位が相場です。自社開発やSaaSの利用よりも費用は抑えられるでしょう。
開発手順
プラットフォームを利用したシステム開発は、次のような手順になります。
- 要件定義:必要な機能や予算、公開時期などを決定します。
- 設計:サイトマップやコンテンツマップを作成し、ページごとに必要な機能や仕様を決定します。
- ベンダーを選ぶ:プラットフォームのサービスを提供する会社を決定します。
- カスタマイズ:プラットフォーム上で機能や仕様を設定します。
- データ入力:商品情報やプラン、写真などを登録します。
- 運用テスト・修正:サービス公開前に、実際に操作してテストを行い、不具合を修正します。
- 公開:正式にサービスの提供を開始します。この後はベンダーからアフターフォローがあることが多いです。
※実際の費用は業種や細かな状況、利用するサービス会社などによって大きく異なります。費用相場はいずれも大まかな目安程度ととらえ、必ず見積もりを取ってください。
自社に合ったサブスクリプションサービスの導入方法を選ぼう
一から始めるにしろ既存のECサイトに追加するにしろ、サブスクリプションサービスを導入するには、システム開発の必要があり、開発の方法には自社開発やSaaS、プラットフォームの利用があります。また、SaaSやプラットフォームの内容も、ベンダーによりさまざまです。自社の商品やサービス、開発に回せるリソースなどから、自社に合った最適な方法を選びましょう。
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