マーケティングや営業活動を効率よく進めるためのシステムとして、近年注目を集めているのがMA(マーケティング・オートメーション)、SFA(セールス・フォース・オートメーション)、CRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)の3種類です。
いずれも顧客情報を取り扱うシステムですが、それぞれに目的が異なり、搭載されている機能にも違いがあります。
この記事ではMA、SFA、CRMの3つのシステムについて、それぞれの特徴や相違点を解説します。
営業活動の流れ
まずは企業が行う営業活動の流れから整理しましょう。
営業活動の進め方は業種や業態によって多少は異なるものの、基本的な流れは同じで、通常「1.見込み顧客を発見」し、「2.見込み顧客に対してアプローチ」をかけ、「3.受注を経て顧客を獲得」し、「4.獲得した顧客に対して継続的に営業活動」を行うというステップで進みます。
このうち、主として1の活動で使われるのがMA、2~3で使われるのがSFA、4で使われるのがCRMです。
MAを活用して見込み顧客を獲得し、獲得した見込み顧客に対する営業活動をSFAで効率化し、既存顧客との間により良い関係を築くための活動にCRMを役立てるのです。
MA、SFA、CRMの目的と特徴
前述の流れを念頭に、3つのシステムの目的と特徴を見ていきましょう。
MAの目的と特徴
まず、MAはMarketing Automationの頭文字を並べたもので、文字どおり、マーケティング活動を自動化するシステムのことです。
既にご説明したとおり、営業活動の源泉となる見込み顧客を創出することが主な目的で、有名なものには、b→dashやPardotなどがあります。
例えばBtoBの営業活動といえば、顧客のもとへ足しげく通って注文を取る、いわゆる「御用聞きスタイル」が一般的でした。しかし、インターネットの普及に伴い、「まずはWebで情報収集をし、本当に必要になった段階で初めて業者に訪問を依頼する」という形が一般的になりつつあります。
こうしたなかで、Web経由で見込み顧客を獲得するための活動を支援するのが、MAです。
Webサイトを訪れたユーザーにメールマガジンの申し込みや会員登録などを促してつながりを作り、接触を繰り返しつつ「機が熟す」のを待ちます。そして、「そろそろ営業訪問してもよさそうだ」という段階になったところで、「ホットな見込み顧客情報」として営業部門へ手渡すのです。マーケティング活動を支援するシステムですから、通常は企業内のマーケティング部門が運用を担当します。
MAの特徴は、Webサイトやアプリなどの各種メディアと連動して顧客の情報を管理できる点にあると言えるでしょう。
多くのMAに共通して搭載されている機能として、以下のようなものが挙げられます。
1.見込み顧客情報管理(獲得した見込み顧客の属性情報を管理)
2.Webサイト上での行動トラッキング(Web上での行動履歴などを管理)
3.見込み顧客の情報に基づくメディアのカスタマイゼーション(見込み顧客の属性・行動履歴に応じてWebサイトの表示を変えるなど)
4.スコアリング(見込み顧客の現在の状態を数値で可視化する)
SFAの目的と特徴
SFAはSales Force Automationを略したもので、営業活動の可視化とチーム内での情報共有を主な目的とするシステムです。
よく知られたシステムにはSalesForceがあります。
見込み顧客に対して営業担当者がアポイントを取って訪問し、提案活動を行って、最終的には受注を目指すといった、一連の営業活動の進捗(しんちょく)状態を可視化するとともに、複数の営業担当者間の連携強化などに役立てられます。
営業活動を管理・効率化するためのシステムですから、通常は営業部門が主体となって運用します。
多くのSFAに共通して搭載されている機能として、以下のようなものが挙げられます。
1.顧客情報管理(顧客の属性情報を管理)
2.案件の進捗状況管理(アポイント済、訪問済、提案中など)
3.案件情報管理(案件規模、概要など)
4.営業担当者管理(営業担当者と案件をひも付けて管理)
5.担当者間のメッセージング(ちょっとしたSNS機能が搭載されているものもある)
CRMの目的と特徴
CRMはCustomer Relationship Managementの頭文字を並べたもので、日本語では「顧客関係管理」と訳されています。
「顧客関係管理」という語は、本来は顧客との良好な関係性構築に取り組む一連の活動を指しますが、顧客関係管理のために使われるシステムのことを、CRMと呼ぶケースも少なくありません。
概念とシステムをあえて区別して語る場合は、システムのことを「CRMシステム」と呼ぶのが普通です。
有名なCRMシステムにはZoho CRMやHubSpotなどがあり、MA、SFA、CRMを組み合わせて利用する場合は、CRMは主に獲得した顧客に対するフォローの部分を担当することになります。
さて、「1対5の法則」という言葉があります。
これは「既存顧客に再度商品を購入してもらうためのコストが1だとすると、新規顧客を獲得するためのコストはその5倍かかる」ということを示す経験則です。既存顧客に対して「ほかの商品を新たに提案する(クロスセル)」、「より上位の商品を薦める(アップセル)」といったアプローチを行うことは、新規顧客を獲得するよりも少ないコストで効率よく売り上げをアップすることにつながります。
この法則が示すとおり、利益の拡大を目指すうえでは、既存顧客との関係性構築が重要なポイントとなります。
こうしたアプローチを「強引な押し売り」ではなく、顧客のニーズに即して適切なタイミングで行うことができれば、自社・顧客ともにメリットが生まれますし、そうした活動を繰り返すことによって、顧客満足度も向上します。このような活動を支援するのが、CRMというシステムです。
多くのCRMに共通して搭載されている機能として以下のようなものがあります。
1.顧客情報管理(顧客の属性情報を管理)
2.セグメンテーション機能(顧客の属性、行動履歴等で顧客情報を分類)
3.メールマーケティング機能(特定のセグメントに対するメールの一括送信)
4.対応管理(問い合わせ、クレームなどのやりとりを管理)
5.キャンペーン管理(販促キャンペーンなどの告知、開催、結果集約)
6.データ分析(顧客の属性、行動履歴、購入情報などを分析)
CRMもマーケティング部門が主体となって運用されることが多いですが、近年になってCRMの重要性が広く認識され、全社的な活動としてCRMに取り組む企業も増えています。
このような場合は、経営戦略部のような部署が運用のかじ取りをするケースもあるようです。
目的に応じてシステムを選択しよう
以上、この記事では企業の営業活動で用いられるMA、SFA、CRMの目的と主な搭載機能をご紹介しました。
いずれも顧客情報を管理する機能を持つシステムですが、営業活動のなかで担う役割や搭載されている機能は異なります。
MA、SFA、CRMを上手に組み合わせて利用することで高い効果を得ることが期待できますが、予算や体制などにより、3つすべてを導入するのが難しいというケースもあるでしょう。
そのような場合は、まずは現在自社が抱えている課題について、「何が一番問題なのか」「どこが一番改善しやすいのか」といったことを検討したうえで、現時点で最も役立つシステムから導入することをおすすめします。