広告配信システムを正しく理解することは、Webサイトで広告を運用していくための必須項目のひとつです。現在、Webサイトのほとんどが広告を掲載していますが、広告の多くは広告配信システムを経由して配信されています。広告配信システムを理解することで、自社が配信する広告や自社のWebサイトに表示される広告を適切に管理できます。広告配信システムについて、なかでもよく使われるDSPの基本的な仕組みやメリットを説明します。
インターネット広告の基本
インターネット広告とは、Webサイトや動画、アプリケーションなど、インターネット上の媒体に掲載される広告のことです。ネット広告、Web広告、オンライン広告と呼ばれることもあります。
インターネット広告には、Webサイトへのバナー、検索結果画面へのテキスト表示、動画への挿入、アプリ上の表示など、表示の仕方や配信方法により、さまざまな種類があります。
インターネット広告が登場するまでは、マス広告と呼ばれる、テレビやラジオ、新聞や雑誌などの広告が主流でした。マス広告は幅広いターゲットに向けて同じ内容を発信します。
インターネット広告には、マス広告とは異なる特徴があります。
インターネット広告の特徴
インターネット広告の特徴は以下のとおりです。
- 低コスト
インターネット広告は、課金方法がマス広告とは異なります。広告の効果が発生してから初めてコストがかかるPPC(クリック課金)型と呼ばれる課金方法で、コストを低く抑えられます。また、広告の単価や広告の合計金額に上限を設定することも可能です。 - きめ細かいターゲティング
インターネット広告では、ターゲットを絞り込んで広告を表示することが可能です。ターゲットは性別、年代、これまで閲覧したページ、検索ワードなどから選定できます。自社の商品やサービスに興味をもちそうなターゲットに限ってピンポイントで広告を表示し、費用対効果を上げることが可能です。 - 効果測定がしやすい
インターネット広告では、広告の表示や効果の分析に必要なさまざまなデータを細かく取得できます。表示媒体や広告の種類ごとの効果を分析し、広告の費用対効果を上げていくことが可能です。 - 運用中でも広告の再出稿や調整が可能
インターネット広告では、広告の出稿後、効果を即日で分析することが可能です。また、運用中に広告を改善して再出稿したり、ターゲットを調整して広告を修正したりできるため、費用対効果をより大きくできます。
インターネット広告の種類
インターネット広告には次のような種類があります。広告の目的や内容、ターゲットにあわせて選ぶことが大切です。
- ディスプレイ広告
Webサイトやスマートフォンアプリなどの広告枠に配信される広告です。ひとつのWebサイトにも、いくつものディスプレイ広告が掲載されています。DSPによって配信される広告もディスプレイ広告のひとつです。 - SNS広告
SNS上で配信される広告です。SNS上のユーザーの属性や閲覧履歴、行動履歴を利用することで、より細かいターゲティングができます。広告元の企業とユーザーがSNSでコミュニケーションをとり、SNSからキャンペーンに応募することも可能です。 - リスティング広告
GoogleやYahoo!でユーザーが検索したキーワードに連動して配信される広告で、検索連動型広告ともいいます。キーワードはユーザーの興味・関心に応じているので、より細かく効果的なターゲティングが可能です。 - ネイティブ広告
出稿先の媒体に溶け込むような形で配信される広告です。Webサイトの場合は記事形式で「記事広告」と呼ばれ、SNSの場合は投稿形式で「インフィード広告」と呼ばれます。コンテンツの一部のように見えますが、「PR」「広告」などの表記で、広告であることがわかります。 - 動画広告
動画形式の広告です。動画配信サービス上で配信されたり、ディスプレイ広告のひとつとして配信されたりする、情報量の多い広告です。
DSPとは
DSP(Demand Side Platform)とは、ディスプレイ広告を配信する仕組みのひとつです。広告主(広告を配信する側)のためのプラットフォームで、広告の費用対効果を最大化するために開発されました。
DSPの特徴
- 媒体ではなくユーザーにあわせた広告配信
Webサイトごとの広告枠ではなく、閲覧するユーザーにあわせた広告の配信が可能で、広告枠はターゲットにあわせて調整されます。ターゲットを絞り込んだ広告を配信することで、より効果を上げることが可能です。 - 広告の運用が容易
DSPは複数のアドネットワークへの広告配信を一元管理し、より効果的な配信先を選ぶことができます。広告の運用・調整も管理画面から一括して操作できます。複数の媒体や多種類の広告の運用が容易です。
DSPはどのように動作しているのか
DSPからユーザーが閲覧しようとしているWebサイトに広告が配信されるときには、次のような動作が行われています。ユーザーの情報とは、性別、年代、住所、行動履歴、検索履歴などです。
- ユーザーが、DSPが広告枠を契約しているWebサイトを閲覧しようとする
- Webサイトはユーザーの情報をもとにSSPに広告をリクエストする
- SSPはDSPに、ターゲットにあわせた広告を配信するようリクエストする
- DSP内で広告枠のオークションを行い、結果をSSPに送信する
- SSPからWebサイトに、複数のDSPのなかから広告枠を落札したDSPの情報を送信する
- WebサイトからDSPに、広告配信をリクエストする
- DSPからWebサイトへ広告が配信される
- ユーザーのブラウザで、Webサイトの内容と同時に広告が表示される
SSPとは
SSP(Supply-Side Platform)とは、DSPとは逆に、広告が配信されるWebサイト媒体のためのプラットフォームです。Webサイトの広告収益を最大化させるために使われます。DSPとSSPが連動することで、より適切で効果的な広告を表示することが可能です。
DSPのメリット・デメリットと料金
DSPのメリットとデメリット、料金体系を説明します。
DSPのメリット
DSPを使うと、次のようなメリットがあります。
- ターゲットを絞り込める
DSPは、複数のネットワーク上にある多数のWebサイトを配信先として登録しており、そのなかからより自社の商品やサービスに合ったユーザーを選び出して広告を配信します。それによって、費用対効果を大きくすることが可能です。 - 顧客の類似ユーザーをターゲティングできる
既存の顧客ではなくても、類似した特性や嗜好(しこう)をもつユーザー(類似ユーザー)に広告を配信し、潜在的な顧客を開拓することができます。類似ユーザーは、自社の顧客と類似した行動やキーワードから選定されます。 - 運用管理担当者の工数を削減できる
これまで運用担当者のカンと経験をもとに手作業で行っていた広告の効果分析や、配信先や広告入札価格の調整などを、DSPで半自動化することが可能です。担当者の作業負担を大きく軽減できます。
DSPのデメリット
DSPを使うと、次のようなデメリットも生まれます。
- 広告の配信先がわからない
DSP会社によっては、どのWebサイトに広告が配信されているかが広告主に開示されないことがあります。効果の分析に必要な情報が十分に取得できないのです。そのため、広告の修正や次の施策立案には役立ちません。配信先を知りたい場合は、DSP経由ではなく直接広告枠を購入するか、Google広告のように、配信先を開示しているDSPを利用するといいでしょう。 - 手数料がかかる
DSPを利用すると、広告料金のほかに手数料や初期費用がかかる場合があります。コストは合計していくら必要になるのか、利用前に確認しましょう。最低出稿金額や最低契約期間が設定されているDSPもあります。 - 得意不得意がある
DSP会社にはそれぞれ、得意なターゲット層やジャンルがあります。DSPによって提携している配信先が異なるためです。多くの配信先と提携しているジャンルには強いといえるでしょう。また、配信先を決定するためのデータやその分析方法はDSPによって異なります。つまり、同じターゲット層の広告でも、DSPが異なれば配信先も異なるのです。
DSPを利用する場合は、上記のメリットとデメリットを理解したうえで、適切に運用する必要があります。
DSPの料金
DSPの料金システムには、インプレッション課金型、クリック課金型、成果報酬型の3つがあります。
- インプレッション課金型(CPM)
表示保証型ともいわれます。一定期間内に広告を何回表示したかによって、料金が決まる料金システムです。問題になるのは広告の表示回数だけで、クリックされる必要はありません。相場は1インプレッションあたり数十円~数百円程度で、ジャンルや広告により異なります。 - クリック課金型(PPCまたはCPC)
広告が何回クリックされたかで料金が決まる料金システムです。問題になるのはクリックされた回数だけで、その後、決済が完了される必要はありません。相場は1クリックあたり数十円~数百円程度で、ジャンルや広告により異なります。 - 成果報酬型
ユーザーが既定のアクション(物品の購入、会員登録など)を行った回数で料金が決まる料金システムです。クリックされても既定のアクションが行われないと、料金は発生しません。相場は1契約あたり数十円~数千円程度で、ジャンルや広告により異なります。課金までの難易度が高いため、広告料金も比較的高めです。
インターネット広告は配信するだけでなく運用が重要
インターネット広告のターゲティングには、マス向けから細かくターゲットを絞り込むものまでいろいろなサイズがあります。配信先もさまざまで、広告の形式も画像や動画など多様です。
しかし、基本的な運用ポイントは同じです。一度配信して終わりではなく、広告の閲覧回数やクリック回数、さらにコンバージョンをチェックし、成果を細かく分析して、調整を続けていかなくてはなりません。また、インターネット広告の周辺では日々新しい技術や手法が生まれており、対応する法規制も更新され続けています。インターネット広告を効果的に運用するためには、常に知識やスキルをブラッシュアップして、最新の情報収集につとめなくてはなりません。そのためには、使いやすい広告配信ツールが必要です。
「VALUE KIT」の部品「広告」なら、既定の部品を利用するだけでなく、自社にあわせた細かなカスタマイズが可能です。例えば、サイト内の任意のエリアに広告枠を定義して、特定の時期に特定のターゲット層に広告を配信し、その効果を測定することもできます。 詳しくは発注した段階で7割が完成している極力開発をしない開発会社の「VALUE KIT」をご覧ください。