最近はオンプレミス型ではなく、クラウド型のCRMを利用する企業も多くなっています。
一方、CRMをクラウドで運用することに不安を感じる企業もあるでしょう。
セキュリティをはじめ、クラウドCRMにはオンプレミスCRMとは異なる特徴があります。
今回はオンプレミスとの違いやメリット・デメリット、選定の際のポイントなどをご紹介します。
クラウドCRMとは何か
クラウドCRMは、クラウド上で運用されているCRMです。
CRMとはCustomer Relationship Managementの略で、日本語に訳すと「顧客関係管理」という意味をもっています。顧客に関するあらゆる情報を一元的に管理し、顧客ごとに購入や商談の履歴を整理・分析して、顧客ごとに最適化されたアプローチを効率的に行うことが可能になるツールです。
見込み顧客へのアプローチにも既存顧客のサポートにも利用でき、LTV(顧客生涯価値:1人の顧客が企業にもたらす価値の総額)や顧客満足度が向上して会社の利益につながります。
クラウドCRMとは?
クラウドCRMは、ベンダーによりクラウドサービスとして提供されているCRMツールで、インターネット経由で利用します。このあと説明するオンプレミス型より手軽に導入できるため、中小企業にも向いています。
クラウドCRMには、
- データはクラウド上で一括して管理
- パソコンやスマートフォン、タブレットなどマルチデバイスに対応
- ハードウエアを用意する必要がない
- データ容量、アクセス量などは必要な分だけ使うことができる
- 他社も同じようなクラウドCRMを使っている場合、顧客管理の手法が似てくる
など、クラウドならではの特徴があります。
クラウドCRMの例
クラウドCRMには、次のようなものがあります。
- Salesforce Sales Cloud
世界トップシェアのグローバルなCRM。CRMとSFA(営業支援システム)が一体になった、営業活動をトータルでサポートするツールです。カスタマイズしやすく導入事例も多いため、多くの企業や業務に合わせられます。ユーザー1名につき月額3,000円でユーザー10名までの中小企業向けや、月額1万8,000円で細かなカスタマイズが可能なものなどさまざまなプランがあります。 - ネクストSFA
シンプルなインターフェイスで入力しやすい営業支援ツール。導入時にはプログラミングではなく設定だけでかなりのカスタマイズができ、多様なビジネススタイルに対応します。無料で回数無制限のサポートが利用可能です。ユーザー数10名までは基本利用料金が月額5万円で、それを超える場合は、ユーザー1名につき4,000円の追加料金がかかります。 - Zendesk
カスタマーサービスに強く、カスタマーサポートウエアとしては世界でも大きなシェアを占めます。複数のチャネルにわたる顧客とのコンタクトを一括管理し、顧客とのコミュニケーションをスムーズに進めることが可能です。利用できる機能の種類により、ユーザー1名につき月額5ドルから199ドルまで5段階の料金プランが用意されています。
オンプレミス型との違い
オンプレミス型は、自社にサーバーを用意してソフトウエアをインストールする形のシステムで、自社専用に構築します。導入に長い時間や大きな費用がかかるので、主に大企業向きのシステムです。
オンプレミスCRMには、次のような特徴があります。
- サーバーも回線も社内に専用のものを用意するため、情報漏えいやウイルス侵入のリスクが少なく、セキュリティが強固
- ソフトウエアは既存のものを自社専用にカスタマイズするため、仕様や機能も自由に設定。大幅な機能追加や仕様変更には、ソフトウエアのライセンス代に加えてハードウエアのスペックアップも必要となるケースが多く、導入後の拡張性は高くない
- ハードウエア自体やソフトウエアのカスタマイズ、導入時やメンテナンス時の人件費など、高コスト。バージョンアップのたびにソフトウエアのライセンス代や人件費も必要。しかし一度導入すれば不具合や不都合が出るまでそのまま使い続けることで、ランニングコストを抑えることは可能
クラウドCRMのメリットとデメリット
メリット
クラウドCRMには、オンプレミス型のCRMと比較して、次のようなメリットがあります。
- 初期費用が低い
ユーザーがサーバーや回線などのハードウエアを用意したり、ソフトウエアのライセンスを購入したりする必要はなく、導入時に必要なスタッフもごく少数です。初期費用がオンプレミス型よりも低いのが最大のメリットです。
- 導入に時間がかからない
ハードウエアの購入やセットアップの手間がかからないので、導入までの時間が短くすみます。クラウドCRMは標準的な機能の組み合わせをパッケージにして提供しているところが多く、カスタマイズもスピーディに行うことが可能です。 - 拡張性が高い
リソースを自由に拡張できるので、必要に応じて容量やアクセス量、機能を追加していくことも、不要な部分を縮小してコストダウンすることも容易です。
- いつでもどこからでも使うことができる
スマートフォンやタブレットなどインターネットにつながっている端末があれば、時間や場所を問わず利用できます。営業スタッフが外出先から顧客データベースを利用することもできるので、データの処理のためだけに帰社する必要はありません。
- メンテナンスが容易
システム部分のメンテナンスはベンダーが行うため、自社スタッフはカスタマイズ部分のメンテナンスのみですみます。 - 災害対策になる
クラウドCRMのデータはクラウド上で管理されているので、データを処理している端末が紛失したり破損したりしても、データが破壊されることはありません。自社のある地域で災害が発生しても、データセンターは別な場所にあるうえ、バックアップも用意されているので、容易にデータを復元できます。そのため、クラウドCRMはBCP(事業継続計画)として利用することも可能です。
デメリット
次のようなデメリットがあります。
- コストが意外にかかることもある
ほとんどの場合月額課金制ですが、料金はアカウント数やサーバーの容量で変化します。アカウント数が多い場合、オンプレミス型よりも高くなる場合があります。 - カスタマイズ性が低い
あらかじめある程度の機能がそろっていますが、各企業の事情に合わせたカスタマイズや既存のシステムとの連携には不便なこともあります。
- セキュリティの不安
通常ベンダー側でも暗号化や権限の管理などを行ってセキュリティを強化していますが、クラウドCRMはインターネットを介して利用するので、不正アクセスや情報漏えいのリスクがあります。
- 接続障害が発生すると利用できない
クラウド側と端末側のどちらかでインターネット接続に障害が発生すると利用できなくなる場合があります。
クラウドCRM選定のポイント
クラウドCRMにはそれぞれに特徴があり、どのツールを選ぶかが、導入効果に大きく影響します。
自社に合ったクラウドCRMを選定するには、CRMを導入する目的を確認する必要があります。
何のためにCRMを導入したいのか、自社のどんな課題を解決したいのかが決まれば、そこから導入するクラウドCRMに求められる機能が明確になるからです。
次のようなポイントをチェックするとよいでしょう。
自社のこれまでの業務に合ったシステムかどうか
自社に合うシステムとはどういうものでしょうか。
求めている機能や要件を満たすか、自社の既存のシステムとうまく連携できるか、標準機能で満たせない部分はカスタマイズできるか、予算内で導入できるか。これらの条件を満たすものを試用してみると、自社に合ったものを見つけやすいでしょう。
自社のスタッフで運用できそうか
導入するシステムが自社の業務に合ったものでも、スタッフが利用できなければ意味がありません。
導入したCRMは誰がどのように使うのかを考え、そのスタッフが日常的に利用しやすいのか、実際に試用して操作を確認しましょう。
運用実績
できるだけ長く運用されており、導入している企業が多い実績を持つものを選びましょう。
長い運用歴や多くの導入実績があれば、それだけノウハウやトラブルへの対処法が蓄積されており、信頼性の高い製品と言えます。また、バージョンアップのたびにユーザーの要望を取り入れて進化していることも想定できます。
セキュリティ体制
顧客のデータをクラウド上で扱うため、セキュリティ体制は重要なポイントです。
ベンダーがどのような対策を行っているかは、導入前に必ずチェックしましょう。
導入後の運用を考慮したうえで、自社に適切なCRMを選ぼう
クラウドCRMには、新しい機能を追加しやすい、新しい働き方に対応可能などのオンプレミス型にはないメリットがありますが、デメリットも存在します。
導入したCRMを十分に活用するために、特徴をよく理解して自社に合うものを選定しましょう。
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