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【人材】今必要なデジタル時代の人材とは、DX白書2021第3部を徹底解説

優秀な人材たち

DXに成功した企業にはどのような人材が集まっているのでしょうか。人材不足がDX推進の妨げになっているという話が多いように、DXのような大きな変革を成功させるには、社員一人一人の変化が欠かせません。この記事では「DX白書2021」の第3部「デジタル時代の人材」の解説から、DXに必要な人材の特徴とは何か、育成、獲得方法について見ていきます。

DX白書はIPA公式サイトからpdfでダウンロードできます。

【目次】

  1. 第3部の構成
  2. DXを推進する人材とは(第1章 日米調査にみる企業変革を推進する人材)
  3. (第2章 スキル変革を推進するためのデジタル時代の人材に関する国内動向)
  4. まとめ

第3部の構成

DX白書2021の第3部では、2章に分かれ約70ページ(89ページから158ページ、企業インタビューを除く)に渡り日米企業のDXを推進するために必要とされる人材像に関わる調査結果と、結果の比較検討からわかるデジタル時代の人材の特徴、社員の教育方針や社外採用の注意点など人材不足を解消するための施策を考察しています。

第3部を読み、DXにおける人材の課題を整理し、あなたの会社に必要なデジタル人材とその人材獲得のために必要な変革を明確にしましょう。

DXを推進する人材とは?(第1章 日米調査にみる企業変革を推進する人材)

DXを推進する人材が不足していると言われる現状を、さまざまな角度からの調査で分析しています。また、調査の結果から、デジタル時代に必要とされる人材の特徴と、人材不足問題の解決の糸口や方向性を提言してくれています。

DXを推進するリーダーに求められることは日米で異なる

「企業変革を推進するためのリーダーにあるべきマインドおよびスキル」について日米企業に尋ねた結果、日本企業は「リーダーシップ」「実行力」「コミュニケーション能力」「戦略的思考」を重視していることがわかりました。

一方で、米国企業は、「顧客志向」「業績志向」「変化志向」「テクノロジーリテラシー」を重視しています。

日米企業の差が激しかったのは「実行力」(日本48.9%、米国19.0%)と「テクノロジーリテラシー」(日本9.7%、米国31.7%)でした。

人材の「質」と「量」の両面に不足を感じる日本

「事業戦略上、変革を担う人材の「量」または「質」の確保」について尋ねた結果、「過不足はない」と回答した企業は、米国​​企業で「量」が43.6%、「質」が47.2% であるのに対し、日本企業は「量」が15.6%、「質」が 14.8% となり、日本企業の多くが量と質の両面での人材不足を課題に捉えていることが明らかになりました。

職種に限らず満遍なく不足している

さらにIPAは、職種別にデジタル人材の「量」「質」の充足度を調査しました。調査対象となった職種は以下になります。その結果、職種ごとに大きな差がみられることはなく、どの職種においても量と質の両面が不足していると考えられます。

「DX白書2021」から引用(94頁)

従業員規模が301人以上1,000人以下の企業が最も人材不足

従業員規模別で、変革を担う人材の「量」と「質」の確保状況を調査した結果、不足している(「大幅に不足している」、「やや不足している」)と回答した割合が最も多かったのが301人以上1,000人以下の従業員規模の企業でした。

米国企業についても、最も人材不足を感じているのは日本同様に301人以上1,000人以下の企業ですが、「過不足はない」と回答している割合が「量」については日本5.3%、米国33.3%。「質」については日本9.6%、米国43.8と内訳は大きく異なっています。

他にも、従業員規模別にみた「データサイエンティスト」の量と質、「プロダクトマネージャー」の量と質の確保状況についての調査も行われました。(本書の96ページ以降)

必要な人材の「量」の不足感が低い米国企業の特徴

米国企業で「量」の不足感が低い企業は、「企業変革を推進するためのリーダーにあるべきマインド及びスキル」については、「顧客志向」、「リーダーシップ」、「意思決定能力」、「モチベーション」を重視しています。

「データ整備・管理・流通の課題」について尋ねた結果から、人材の「量」不足を感じている企業に比べて課題が少ない傾向があることがわかり、「経営層のデータ利活用への理解があり、IT部門が最新データ技術に対応できている」と言えます。

「AIの導入目的」について尋ねた結果からは、多くがAIを「既存サービスの高度化、付加価値向上」、「新製品の創出」、「新サービスの創出」に活用していることがわかりました。また、「既存サービスの高度化、付加価値向上」と「品質向上(不良品低減、品質安定化)」にAIの活用を試みる割合は、人材の「量」不足を感じている企業より20%も多いことがわかりました。

「プロダクトマネージャー」、「ビジエスデザイナー」を育成したい

日米企業ともに、「デジタル事業に対応する人材で重要と考え、育成したい人材」への回答が、1位「プロダクトマネージャー」、2位「ビジエスデザイナー」でした。

この「Di-Lite」は、変化のスピードが早いデジタル社会に対応していくため、毎年その定義がアップデートされますが、Di-Liteをベースとしたビジネスパーソンが取るべき「ラーニングパスの見える化」を行っており、社員のITリテラシー向上を加速させる有効な施策として注目が集まっています。

「組織を超えた協力・協業」がDX人材を増やす鍵

第2部の4章で「部門間などの組織の壁を越えた協力・協業」を行うことができていると回答した企業と人材育成の関係について分析した結果、「部門間の組織を越えた協力・協業」ができている企業ほど、社員のITリテラシーの把握と向上施策の取り組み、キャリアサポートの実施を行うことができていることがわかりました

米国の学び直しの方針は「全社員対象」が多数

社員の先端技術領域(AI、IoT、データサイエンスなど)の学び直し(リスキル)の方針を日米企業に尋ねた結果、「全社員対象での実施」と回答した割合は、日本7.9%に対し米国37.3%。「会社選抜による特定社員向けの実施」と回答した割合は、日本16.1%、米国34.7%と顕著な差がみられました。

さらに、日本企業の46.9%が「実施していないし検討もしていない」と回答しており、米国企業が9.8%と比較すると、そもそも学び直しの方針の有無から差が大きいことがわかりました。

米国のキャリアサポートの手厚さ

どのようにして企業変革を推進する人材のキャリアサポートを実施しているか尋ねた結果、全ての項目で米国企業の実施割合が日本企業を上回っています。

「DX白書2021」から引用(103頁)

自社社員の競争力に自信を持てるか

  • IT企業やネットビジネス企業に所属する研究者やエンジニア
  • 一般の事業会社の情報システム部門に所属しIT業務に携わる人材
  • ITを活用して新規事業創造、新技術・製品の研究・開発、既存製品・サービスの付加価値向上
  • 業務のQCD向上などを行う人材

上記について他社と自社の社員の競争力の比較について尋ねた結果、自社社員の競争力に「十分な競争力がある」と回答した企業は、日本12.7%に対し、米国は72.4%でした。

全社員のITリテラシーレベルの把握、向上に向けた取り組みの遅れ

IT部門以外の人材がデジタル技術を活用できる十分なITリテラシーを備えているかどうかは、DXを全社へ浸透させるための組織的な課題の1つです。

経営トップに限らず、全社員のITリテラシーレベルを把握する必要がありますが、調査の結果、「認識・把握している」と「だいたい把握している」を合わせた回答の割合は日本39.8%、米国80.8%で把握状況に大きな差が開いています。

また社員のITリテラシー向上に関する施策状況に尋ねた結果、「社内研修・教育プランを実施している」と回答したのは日本22.0%、米国54.5%。「実施していない」と回答したのは日本53.7%、米国12.7%と、把握に限らず、施策の実施状況にも大きな差があることがわかりました。

Di-Liteに注目

2021年4月に発足した「デジタルリテラシー協会」は、「全てのビジネスパーソンが持つべきデジタル時代の共通リテラシー」としてDi-Liteを定義しています。

製造業における日米企業の人材育成についての意識差

いくつかの業種のうち、日米合計で回答数の多かった製造業に焦点を当てて、日米の人材育成の取り組みに関する調査比較が行われました。

「企業変革を推進するためのリーダーにあるべきマインドおよびスキル」について、日本は「実行力」「リーダーシップ」「意思決定能力」の順に、米国では「顧客志向」「業績志向」「変化志向」の順に高いことがわかりました。

「社員の学びの方針」について尋ねた結果、「全社員対象での実施」と回答した割合が米国48.4%、日本3.8%と顕著な差が見られました。さらに、日本は「実施していないし検討もしていない」の割合が最も高く、43.7%を占めました。

「ITリテラシーレベルの認識・把握」についても、「認識・把握している」と回答した企業の割合は米国 59.1%に対し日本4.7%と大きな差が開いていることがわかりました。

情報通信業における日米企業の人材育成についての意識差

日米の比較でテクノロジーリテラシーの差が大きい情報通信業にも焦点を当て、人材育成の取り組みに関する調査比較が行われました。

「企業変革を推進するためのリーダーにあるべきマインドおよびスキル」について、日本は「リーダーシップ」「戦略的思考」の比率が高くなりました。米国は「テクノロジーリテラシー」55.1%が最も高く、日本は15.0%で大きな開きがありました。

「社員の学びの方針」について、米国は「会社選抜による特定社員向けの実施」48.3%が最も高く、日本企業は22.5%で開きがありました。また、日本企業は、「実施していないし検討もしていない」 35%が最も高い割合を占めていました。

「ITリテラシーレベルの認識・把握」について、日米それぞれで最も高い割合を占めたのは、米国が「認識・把握している」51.7%、日本は「だいたい把握している」50%でした。

EX(従業員体験)の向上に取り組むべき

働き方改革で注目されている指標に、EX(従業員体験、Employee Experience)があります。EXとは、社員の立場になって、社員が自社で働くことを通して得るさまざまな経験価値を考えることです。

EXの向上に向けた取り組みについて尋ねた結果、「社内ルールや制度にEX向上を組み込み、企業文化として定着している」と回答した企業割合は、日本4.7%、米国31.4%。「EX向上の取り組みを実施していない」と回答した割合は日本63.9%、米国16.0%と顕著な差が見られました。

第2部3章の調査から、EXに関わる取組の効果は十分に期待できることが明らかになっているため、日本企業は積極的にEXの考え方を取り入れていかなければなりません。

変革を推進するために社員から求められていることとは

①企業文化と価値観(企業の文化や企業で重視される価値観に関すること)

②自身の評価や報酬(自身の業績や貢献が適正に評価される)

③働く環境(働く環境に関すること)

④組織の将来性や業績(組織の将来性や業績に関すること)

⑤人材開発(人材開発(スキルアップ、自己の成長等)に関すること)

⑥自分が携わる仕事(自身が携わる仕事に関すること)

の6つの項目で、社員が変革を推進するために求めていることを調査した結果、日米企業で「強く求められる」の回答に差が見られたのは、「②自身の評価や報酬」の「高いスキルを持っていることが報酬に反映される」という点で、日本36.0%に対し、米国50.1%「③働く環境」の「オフィスの設備や機材が充実している」と「⑥自分が携わる仕事」の「個人の裁量が大きい」「最先端の仕事ができる「自分が携わる仕事を選べる仕組みがある」で、いずれも20%前後米国企業の割合が高くなりました。

米国企業の社員の多くが、変革を推進するための取り組みに満足している

上記6つの項目に関わる取組について、日米企業の社員に満足度を調査した結果、米国企業はどの項目でも「満足している」が50%を超える高い割合を占めました。

一方で、日本企業の社員の多くは、ほとんどの項目で「どちらとも言えない」と回答した割合が6割を占めており、日本企業の取組内容は、EXの観点が不足している可能性があると言えます。

日本におけるDX人材の確保と育成(第2章 スキル変革を推進するためのデジタル時代の人材に関する国内動向)

この章では、これまでの日米比較とは異なり日本国内のみに着目し、2020年度調査(「デジタル時代のスキル変革等に関する調査」)や、IPAが2009年から2020年の間発行してきた「IT人材白書(IT人材動向調査)」の調査内容を継承した章となっています。

日本における人材を取り巻く環境変化や採用、外部人材の活用、社員の学び直し(リスキル)といった人材確保のための現状の分析から、施策のヒントまで提示してくれています。

第4次産業革命の実現に欠かせない、人や組織のマネジメントの改革

第4次産業革命の実現に必要な視点は、デジタル技術の有効活用のみではありません。IPAは2018年度調査(「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に 関する調査)」)と2019年度調査(「デジタル・トランスフォーメーション推進に向けた企業とIT人材の実態調査」)の結果から、基盤となる人や組織のマネジメントの変革も重要であると主張しています。

IT人材は推計約135万人

  • IT企業やネットビジネス企業に所属する研究者やエンジニア
  • 一般の事業会社の情報システム部門に所属しIT業務に携わる人材

ITを活用して新規事業創造、新技術・製品の研究・開発、既存製品・サービスの付加価値向上、業務のQCD向上などを行う人材をIT人材の範囲として、国内事業会社のIT人材の推計とIT人材の職種・レベル別推計、国内IT企業のIT人材の推計とIT人材の職種・レベル別推計が行われました。

事業会社のIT人材の推計が約34万人、IT企業の推計が約101万人で合わせて推計数は約135万人となりました。

IT人材が所属する企業の国際比較は2022年度に実施予定

「IT人材白書2017」の中で、IPAは情報処理・通信に携わる人材の所属先企業を調べました。他の国に見られない日本の特徴として、IT企業に所属する割合が72%と比較的高いことなどがわかりました。最新の調査は2022年度に実施が予定されています。

【デジタル時代の人材の環境変化】

IT部門以外の「事業部門等、他部門」に増えるIT関連の「新事業(業務)の実施」

IT人材白書2019(2018年調査)とIT人材白書2020(2019年調査)、2020年調査から、「国内・事業会社のIT業務を担当している部署」と「国内・事業会社の事業部門等におけるIT業務の増減の見通し」を見てみると「新事業(業務)の実施」業務を「事業部門等、他部門」が担当する割合が年々高くなっていることがわかりました。

IT部門に任せるIT業務は「全社ITの企画」と「情報セキュリティリスク管理」

IT部門のIT業務の増減について尋ねた結果、「全社ITの企画」と「情報セキュリティリスク管理」の業務が「増加した」5割前後の企業が回答しました。IT人材白書2020と比較して、年々その割合が高くなっていることから、日本企業のIT部門に期待する役割の共通認識が醸成され始めていると言えます。

IT業務の内製化状況は、全体傾向の変化なし

「国内・事業会社のIT業務の内製化状況の従業員規模別」の調査結果は、IT人材白書2020の調査結果から大きな変化はありませんでした。

従業員規模が大きくなるに従い「企画・設計など上流の内製化を進めている」の割合が高くなり、従業員規模が小さくなるに従い「プログラミング工程を含めた全体工程の内製化を進めている」の割合が高くなります。

事業会社はIT企業より自社のIT人材を把握できていない

事業会社、IT企業の2つに区分して「職種別IT人材の数とレベルの把握状況」を尋ねたところ、「職種別の人材数、人材のレベル両方を把握している」と回答した割合は事業会社38.0%、IT企業51.7%。「把握していない」と回答した割合は事業会社36.7%、IT企業20.1%でした。

事業会社の9割弱がIT人材の「量」「質」両方に不足を感じている

従業員規模別に「国内・事業会社のIT人材の「量」に対する過不足感と「質」に対する不足感」を調査した結果、9割弱の企業が「大幅に不足している」(約4割)「やや不足している」(約4割)と回答しました。

IT企業も8割強がIT人材の「量」「質」両方にやや不足を感じている

従業員規模別に「国内・IT企業のIT人材の「量」に対する過不足感と「質」に対する不足感」を調査した結果、8割強の企業が「大幅に不足している」(約2割)「やや不足している」(約6割)と回答しました。

【効果的な人材確保】

「中途採用」「新卒採用」を初めさまざまな方法でIT人材を確保している「DXに取り組んでいる企業」

国内・事業会社に「過去1年間にIT人材を獲得・確保した方法」を尋ねた結果、DXに取り組んでいる企業では、「中途採用(キャリア採用)」が5割強、「新卒採用」が4割弱を占めました。DXに取り組んでいない企業は「中途採用(キャリア採用)」が3割弱、「新卒採用」が2割弱でした。

DXに取り組んでいる企業は、他にも「既存人材(他部署からの異動者も含む)」(3割弱)や「関連会社(親会社・情報子会社)からの転籍、出向」(2割強)によって自社内での人材流動も行っていることがわかりました。

「ユーザー企業のIT部門」の中途採用率に変化

国内・事業会社が中途採用したIT人材の「直前の勤務先業種」、つまりIT人材の確保・獲得先について尋ねたところ、DXに取り組む企業は「中小SIer(従業員数300人以下のIT企業)」と「ユーザー企業のIT部門」からの採用が同率の43.4%で最も多いことがわかりました。

一方、DXに取り組んでいない企業は「ユーザー企業のIT部門」からの採用が25.0%と、IT人材白書2020の調査の34.2%からさらに割合が低くなりました。DXに取り組んでいる企業とDXに取り組んでいないでは、「ユーザー企業のIT部門」の人材の見方に差が開いてきていると言えます。

「リファラルにおける紹介者からの情報」も参考にすべき?

IT人材を「中途採用する際に、対象者の能力や価値の把握に参考にしているもの」をDXの成果の有無別に尋ねた結果、「ヘッドハンティングや転職エージェントからの情報」がDX成果の有無に関わらず最も高い割合を示しました。

DX成果の有無で差が見られたのは「リファラルにおける紹介者からの情報」で、DXに成果のある企業は22.2%、DXの成果がない企業は14.5%でした。

「人材の『質』」と「採用予算や人件費の制約」が採用する阻害要因

DXの成果の有無別に「国内・事業会社がIT人材を新たに採用する阻害要因」を調査した結果、「要求水準を満たす人材がいない」と「採用予算や人件費の制約」がDX成果の有無に関わらず共通の課題として高い割合を占めました。

スキルを活かす”場”があるか

「DX成果あり」の企業は、「IT人材がAIやIoT、アジャイル等の先端領域や領域スキルを活かす場の有無」について、「かなりある」と回答した企業は27.9%、「多くはないがある」と回答した企業は51.8%で、「DX成果なし」の企業と比較すると、約20%多くの企業がスキルを活かす”場”を用意できていることがわかりました。

DXの成果がない企業は「ビジネスデザイナー」を重要視している

「国内・事業会社の今後重要と考え育成していきたい人材」について尋ねたところ、DX成果がない企業は「ビジネスデザイナー」と回答した割合が35.6%と最も高く、次に「プロダクトマネージャー」が26.5%で、「データサイエンティスト」が10.9%と続きました。

DX成果のある企業は「中途採用」「既存人材」でIT人材を獲得している

「ビジネスデザイナー」「プロダクトマネージャー」「データサイエンティスト」の獲得方法を調査した結果、DXの成果ありの企業は3職種全て「中途採用(キャリア採用)」と「既存人材(他部署からの異動者も含む)」で獲得していることがわかりました。

「DX成果あり」の企業でもIT人材は不足している

「国内・事業会社のIT人材の「量」「質」の不足感」について、DX成果の有無別に調査したところ、「大幅に不足している」と回答した割合は「量」「質」ともにDX成果ありの企業は3割強、DX成果なしの企業は約5割と差がありました。

しかし、「やや不足している」の回答を含めるとDX成果ありの企業でも「量」「質」ともに9割を超える結果となりました。

先端IT従事者かどうかにかかわらず転職に消極的

先端技術・領域※に携わっている「先端IT従事者」(以下、従事者)と、携わっていない「非先端IT従事者」(以下、非従事者)それぞれに転職について調査が行われました。

※先端技術・領域:データサイエンス、AI /人工知能、IoT、デジタルビジネス/ X-Tech、アジャイル開発/ DevOps、 AR / VR、ブロックチェーン、自動運転/ MaaS、5G、上記以外の先端的な技術や領域

この2年間(2019年、2020年)の「転職状況」について、「2年間のうちに転職を行った」と回答した割合は、従事者でさえ2割、非従事者は1割しかいませんでした。

転職に関する考え方については、両者ともに最も多い回答は「より良い条件の仕事が見つかれば、考えても良い」(従事者45.5%、非従事者38.6%)でした。しかし、「できる限りしたくないが、必要であればやむを得ない」、「絶対したくない」と回答した割合は従事者で4割、非従事者は5割近くを占め、転職に消極的な人が多いと言えます。

「良い条件の仕事かどうか」が転職先の判断基準

IT人材は、「自身以外からの助言や指導」よりも「自分のゴールや考え方」を基準にキャリアを判断していることがわかりました。その人の目標や価値観に合った仕事、つまりその人にとって「良い条件の仕事」があれば転職を考えますが、積極的に転職を考えたいIT人材は少ないようです。

【人材活用施策の改善】

IT人材の5つの転換タイプ(自発転換、受動転換、当初から先端、転換志向、固定志向)

業務転換やリスキルによってIT人材となる、新卒採用や、中途採用で確保されたIT人材など、一口にIT人材といってもそのタイプは様々です。DX白書ではより詳細な分析を行うためIT人材を5つのタイプに分けました。

「DX白書2021」から引用(141頁)

先端IT従事者の予備軍である「転換志向」タイプのIT人材は多い

各タイプのIT人材が、どのような役割を担っているのか調査が行われました。(図表32-30)。注目すべきは転換志向タイプの31.7%が「その他(非先端領域)」と回答している点です。彼らにアプローチすれば、先端IT従事者を確保することができるでしょう。

「DX白書2021」から引用(142頁)

先端IT従事者の4割が業務転換を2016~2021年に経験している

先端IT従事者に業務転換経験の有無を尋ねた結果、43.3%が業務転換を経験していることがわかりました。

そのうち、業務転換を経験した時期を尋ねたところ、67.1%が「2016年〜2021年」と回答しました。2016年以降、先端領域への人材転換が進んでいることが表れています。

転換志向者はIT企業、システム系事業会社の人材だけじゃない!

転換志向者の所属先と現業務について尋ねたところ、39.7%が「IT企業」、60.3%が「事業会社」と回答しました。

さらに、「事業会社」と回答した人材のうち39.9%が「システム系(IT)」でしたが、60.1%が「ビジネス系」でした。IT企業、システム事業会社以外の転換志向者は、全体の約36%(60.3×60.1÷100)を占めるため、彼らを対象としたリスキリング施策は重要であると言えます。

先端業務への転換の壁は「スキル習得の自信」と「学び直しの時間的負荷」

転換志向者に対し、「先端業務へ転換する際の障害」について尋ねたところ、「スキル習得できる自信がない」48.8%と、「学び直しの時間的負荷が大きい」43.9%が突出して高い結果となりました。

「小さな成功体験を得られる場の提供」と「勤務制度等の人事制度の見直しおよび、負荷を軽減するための支援策の整備」が、先端業務へ転換させるカギ

転換志向者に「先端業務へ転換する際の助けになるもの」について尋ねたところ、「給料の見直しや業績インセンティブ等の報酬上のメリット」44.3%、「学び直しの支援(教育研修、OJT、スクール等)」40.8%、「今よりも柔軟な勤務体系(勤務時間、勤務日、勤務場所等」31.4%が上位を占めました。

「先端業務へ転換する際の障害」についての調査結果と合わせて、IPAは「小さな成功体験を得られる場の提供」と「勤務制度等の人事制度の見直しおよび、負荷を軽減するための支援策の整備」を企業に勧めています。

転換タイプ別のスキル習得の方法

「今後身につけるべきスキルに関して、情報取得や学習に取り組んでいるか」と尋ねた結果、以下の図のようになりました。この結果と、自社の社員のタイプを合わせてスキル支援制度の改革を考えてみても良いかもしれません。

「DX白書2021」から引用(145頁)

最も身につける必要を感じているのは 「AI/人工知能」の技術やスキル

転換タイプ別に、「今後身につけるべき技術や領域のスキルとして重要度が高いと思うもの」 について尋ねた結果、いずれのタイプでも「データサイエンス」や「IoT」が上位を占め、最も高かったのは「AI /人工知能」でした。

「転換志向」「固定志向」タイプは、先端領域のスキルを学んでも活かす機会がない

転換タイプ別に、「先端領域のスキルを学んだ場合、現在所属する組織の中でそれを活かす機会があるかどうか」について尋ねた結果、転換志向と固定志向タイプともに5割が「将来的にはわからないが現在はほとんどない」と回答し、他のタイプと比較してスキルを活かす場がないことがわかりました。

ITフリーランスでも組織の業務転換によって先端IT従事者になっている

「初めて先端技術や領域の業務に変わった時のきっかけは何だったか」をITフリーランスと企業所属者別に尋ねた結果 、どちらも「所属している/していた組織の異動命令や組織改編、契約先の要請」の割合が高くなりました。

ITフリーランスでさえ、「自発的に希望」と回答したのは37.8%でした。

英語より技術と数学

ITフリーランスと企業所属者に「現在の仕事に役立っているあなたの知的素養」について尋ねた結果、最も高い割合で合った素養は「技術」でITフリーランス88.3%、企業所属者64.3%の方が回答しました。

次に「数学」がITフリーランス52.5%、企業所属者33.9%。その後に「英語コミュニケーション」、「科学」と続きました。

ITフリーランスは、GitHubやKaggleで自身のスキルレベル・市場価値を測っている

「自身のスキルレベルや市場価値を測る・示すために役立っていると考えるツール 」について調査した結果、ITフリーランスの44.2%が「GitHub・Kaggle等のプラットフォーム」を活用しており、企業所属者の18.0%と比較すると2倍以上となりました。

企業所属者は「Facebook、TwitterなどのSNS」29.3%、「転職ポータル(リクナビ等)」27.8%、「資格試験、各種Certification」24.8などを多く使用しているようです。

DX成果のある企業は「手挙げによる選抜」と「全体の底上げ」で人材確保

「IT人材の学びについて会社の方針に近いものはどれか」をDXの成果の有無別に調査したところ、成果ありの企業で最も高かったのは「本人の手挙げによる選抜」43.6%。次に、41.0%の回答があった「全体底上げ」でした。

DX成果のない企業で最も高かったのは、「特に方針がない」43.6%で、成果ありの26.9%と差が開きました。

事業会社側からみたIT人材育成の課題は、「スキル獲得させるための時間確保」と「育成戦略や方針が不明確」であること

事業会社に「IT人材に新たなスキルを習得させるにあたっての阻害要因」について尋ねた結果、DX成果のある企業では「スキル獲得させるための時間確保」が65.7%で突出して高い割合でした。

DX成果のない企業も、59.1%と高い割合で、次に「育成戦略や方針が不明確」が58.4%と続きました。DX成果のある企業では、37.7%で、「育成戦略や方針が不明確」であることはDX成果のない企業の特徴であると言えます。

学びの支援が整備されているDX成果ありの企業

DX成果の有無別に「会社としての学びの支援」について調査が行われました。(図表32-43)

DX成果ありの企業は、成果のない企業よりどの項目でも高い割合となりました。また、DX成果のある企業では、個人任せとなる「勉強会やコミュニティ活動等への参加」についても割合が高い点に特徴があります。

「DX白書2021」から引用(151頁)

DX成果のある企業が実施する社員の学習モチベーションを高める施策

事業会社に「会社として学ぶ意欲を高めるために実施していること」について尋ねた結果、全ての項目でDX成果のある企業がDX成果のない企業より高い割合となりました。(図表32-44)

差が顕著にみられるのは「柔軟な勤務体系」と「学びの支援」で、中でも「柔軟な勤務体系」は、人材育成の阻害要因であった「スキル獲得させるための時間確保」への1つの解決策であると考えられます。

社内IT人材の評価基準を社内に持っているIT企業以外の事業会社は少ない

IT企業と他の事業会社に「社内にIT人材を評価・把握するための基準の有無」について調査した結果、事業の性質上、当然と言えるかもしれませんが、IT企業で「ある」と回答した割合は、DXに取り組んでいる企業で59.4%、取り組んでいない企業でも43.8%となりました。

一方で、他の事業会社は「DXに取り組んでいる」企業ですら「ある」と回答したのはたった19.4%。「DXに取り組んでいない」企業では8.2%でした。

「ITスキル標準(ITSS/ITSS+)」を社内基準の参考にすべき

社内IT人材の評価基準が「ある」と回答した企業に、「社内の基準において参考として利用しているもの」について尋ねたところ、IT企業か他事業会社かにかかわらず、「情報処理技術者試験」の割合が最も高くなりました。

IT企業かつDXに取り組んでいる企業とそれ以外で差が開いたのは「ITスキル標準(ITSS/ITSS+)」で、IT企業は、DXに取り組んでいる企業が40.1%、取り組んでいない企業は23.5%が基準の参考に、他事業会社ではDXに取り組んでいるかいないかにかかわらず25%が基準の参考にしていました。

IT人材の教育費用は前年度と変わらない企業が多数

「IT人材の教育費の前年度に比べた増減」について事業会社に尋ねたところ、IT企業か他事業会社であるかにかかわらず、DXに取り組んでいる企業は取り組んでいない企業に比べて「大幅に増えた」「やや増えた」の回答割合が高かったが、合計してもIT企業で30%程度.、他事業会社は20%程度でした。

企業と社員個人が求める組織と企業文化・風土の認識の差と考察

企業に対して「企業文化・風土、組織の雰囲気や傾向として社員から強く求められているもの」と、個人に対して「働きたいと思う組織に求めることで特に優先度が高いもの」について調査が行われました。(図表32-51)

調査結果から企業と個人の認識の違いについて以下のように考察されています。

  • 全体の傾向に大きな乖離はない
  • 「自身が携わる仕事を選べる仕組みがある」については、企業の認識よりも、個人が重要と考える割合が高く、個人がより主体的に業務を選択していける制度等の整備が望まれている。
  • 「社内の風通しがよく、情報共有がうまくいっている」、「企業の目指すことのビジョンや方向性が明確で社員に周知されている」の差については、企業経営に与える影響という側面が強いため、個人にとっては重要度が低いと考えられる。
  • 「人材開発」が、企業よりも個人が重要と考える割合が低く、企業が学習や成長機会の環境整備が望まれていると捉えている一方で、個人はあまり重要と考えていないという認識のずれが生じていることがわかる

個人に学習意欲を持たせるためには、学びに対する個人の動機づけが必要と推察できる。

「DX白書2021」から引用(157頁)

まとめ

第3部の最後には、以下の図評32-52を用いて、人材についての日本企業の主要課題と解決の方向性が示されています。

「DX白書2021」から引用(158頁)

調査結果を踏まえてIPAは、人材不足は企業側の問題であることを自覚し、評価制度や教育制度を充実させることに注力するべきだと主張しています。いち早く企業体制を整えれば、人材獲得競争で優位に立てるチャンスがあります。第3部の内容を参考に、必要な人材の育成・獲得に向けた変革に取り組んでみてはいかがでしょうか。

DX白書2021では、他に「戦略」と「技術」に焦点を当てた第2部と第4部があります。そちらの内容も合わせて、より適切な人材獲得戦略を策定しましょう。

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