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今さら聞けないデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性とは? 事例をもとに解説

テクノロジーの進化にともない、続々と新しい製品やサービス、ビジネスモデルが誕生しています。人々の生活や社会に大きな変化が生まれる中、注目を集めているのが「デジタルトランスフォーメーション(DX)」です。

年々、推進の必要性が叫ばれるDX。莫大なコストをかけてまで取り組むメリットはあるのでしょうか。この記事では、日本と海外の成功事例をもとに、DXの必要性と解説します。

「デジタルトランスフォーメーション(DX)」とは

IT専門調査会社の「IDC Japan」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を以下のように定義しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンス(経験、体験)の変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

【出典】デジタルトランスフォーメーション – Wikipedia

DXとは、企業がAIやIoT、ビッグデータなどを利用して新たな付加価値を生み出し、競争優位性を確立するという概念です。「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」とも言えるでしょう。

DXに取り組むべき2つの理由

日本企業におけるDXの必要性は高いです。DXに取り組むべき理由は、2つあります。

  1. 競争力の向上
  2. 既存のシステムの老朽化

競争力の向上

DXに取り組むメリットの1つが、国際的な競争力の向上です。テクノロジーの進化にともない、GAFAを始めとする国際的な競争力を持つ企業が、莫大な利益を上げています。私たちの生活は、GAFAなしでは成り立たちません。

かつては、日本企業が国際的な競争力を持つ時代がありました。しかし、テクノロジーの進化にともない、変化に鈍感な日本企業はどんどん力を失っていったのです。日本企業が世界で生き残るためには、DXを推進し、企業体制や事業形態を一新することが求められます。

既存のシステムの老朽化

「2025の崖」という言葉をご存知でしょうか。2025の崖とは、2018年に経済産業省が『DXレポート』の中で指摘した、日本のITシステムが抱える問題点のこと。

経済産業省によると、2025年には、多くの企業で使われている既存のITシステムが老朽化すると言われています。システムの老朽化の主な原因は、そのシステムの仕様を理解している人材の引退です。

経済産業省は、DXレポートの中で以下のように指摘しました。

今後、老朽化したシステムの仕様を把握している人材がリタイアしていくため、そのメンテナンスのスキルを持つ人材が枯渇していくことから、どのようにメンテナンスしていくかという課題もある。こうした中で、先端的な技術を学んだ若い人材をメインフレームを含む老朽化したシステムのメンテナンスに充てようとして、高い能力を活用しきれていなかったり、そのような人材にとっては魅力のある業務ではないために離職してしまったりするといった実態もあり、先端的な技術を担う人材の育成と活用が進まない環境にもなっている。
【出典】DXレポート 第18頁

老朽化したシステムでは、変化の激しい時代に対応できません。放置すると、国際的な競争力が失われ、日本経済に大きなダメージを与えます。

DXの成功事例

DXを推進するためには、具体的にどのような取り組みをすればよいのでしょうか。日本企業や海外企業の成功事例を紹介します。

日本企業のDXの成功事例3選

  1. Mobility Technologies(旧:日本交通)
  2. NECパーソナルコンピュータ
  3. オプティム

Mobility Technologies|AIでタクシー乗車率を向上

【出典】タクシーアプリ『JapanTaxi』と『MOV』の統合に伴い、新たなタクシーアプリ『GO』を9月リリース予定 – Mobility Technologies

Mobility Technologies(旧:日本交通)は、AIを活用した「配車支援システム」を導入しました。配車支援システムは、AIが以下の情報を分析し、乗車需要が多い場所を予測してくれるというもの。

  • タクシーの運行実績
  • 位置データによる人口動態予測
  • 大規模施設でのイベント開催情報
  • 気象情報
  • 公共交通機関の運行状況

Mobility TechnologiesのDXは、配車支援システムだけではありません。Mobility Technologiesは、スマートフォン向けのアプリ「GO(旧:全国タクシー)」も提供しています。GOは、ユーザーがアプリ上で乗車位置を指定するだけでタクシーを呼べるというもの。

アプリ上では他にも、タクシー乗務員とメッセージのやり取りや降車位置の指定、登録したクレジットカードでのスムーズな支払いができます。Mobility Technologiesは、DXの推進により、タクシーの稼働率や売上の向上に成功しました。

NECパーソナルコンピュータ|ダンボール箱の開梱を自動化

【出典】スマートマニュファクチャリング実現に向けて Automation(自動化)による生産性向上 ダンボール箱の開梱業務を70%削減 – NEC

NECパーソナルコンピュータは、NECが提供する自動開梱ロボットを導入し、部品が梱包されているダンボール箱の開封を自動化しました。

NECが提供するロボットは、さまざまなサイズや形状のダンボールに対応し、労働安全衛生マネジメントシステム規格「ISO45001」の審査で高評価を得ているというもの。

導入のきっかけは、カッターナイフを使った開梱作業による安全面の課題です。自動開梱ロボットを導入したことで、カッターナイフを使った開梱作業の解消に成功しました。

自動開梱ロボットの功績は、安全面の課題を解消しただけではありません。ダンボール箱の開梱作業の工数を70%も削減したのです。自動開梱ロボットは、稼働管理アプリケーションにより、設備の状態や消耗品の交換時期を可視化できます。

NECパーソナルコンピュータは、自動開梱ロボットの導入したことで、安全性と生産性の向上に成功しました。

オプティム|IoTを活用した低農薬農法

【出典】スマート黒枝豆 – オプティム

オプティムは、自社の「ピンポイント農薬散布テクノロジー」を活用し、農薬の使用を極限まで減らした「スマート丹波黒枝豆」を栽培・販売しました。

ピンポイント農薬散布テクノロジーは、ドローンが撮影した画像をAIが解析し、虫食い部分にのみ農薬を散布するというもの。これにより、農薬使用量や農薬散布にかかる時間を90%以上削減したのです。

ピンポイント農薬散布テクノロジーを用いて栽培された『スマート黒枝豆』は、1袋680円という高価格にも関わらず、売り上げは好調。「農薬を極限まで減らした安心・安全な農作物」という付加価値を付け、プレミアム路線のブランディングにも成功しました。

海外企業のDXの成功事例3選

  1. AUDI(自動車)
  2. Tulsa Community College(大学)
  3. Domino’s Pizza(デリバリーピザ)

AUDI|ITを活用した小規模なショールーム

【出典】Audi City 紀尾井町

2012年、AUDIは、ITを活用した革新的なショールーム「Audi City」を発表しました。Audi Cityは、都市の中心部にあるマイクロショールームで、AUDIの全車種のカタログに触れることができるというもの。

従来のショールームでは、展示車を多数並べることができませんでした。Audi Cityでは、都心の店舗を歩きながら車を見るだけではなく、購入もできます。

実物大の車が見えるスクリーンや、タブレットを利用して車の中を見たり、車の動きを見たり、実際のエンジン音を聞いたりすることも可能です。Audi Cityは、常時4台しか展示していないにも関わらず、従来のショールームに比べて販売台数が60%も増加しました。

Tulsa Community College|ツールで書類業務を自動化

【出典】Northeast Campus – Tulsa Community College

Tulsa Community College(TCC)タルサ・コミュニティ・カレッジは、文書をすべてデジタル化し、書類関係の業務を自動化しました。TCCは、4つのキャンパスを持つ米オクラホマ州最大の2年制大学です。25000人以上の在学生と、2000人以上のスタッフが在籍しています。

文書をデジタル化する前のTCCは、最短で6時間/枚もかかる大量の書類業務に悩まされていました。そこで導入したのが、米Colosa社のProcessMaker。ProcessMakerは、ワークフローを自動化してくれるツールです。

条件を指定し、自動で承認・非承認を割り当てることができます。TCCは、書類の審査を自動化することで、最短で6時間/枚もかかっていた書類業務の効率化に成功しました。

Domino’s Pizza|ITを活用して顧客サービスを改善

【出典】Domino’s AnyWare – Domino’s Pizza

Domino’s Pizzaは、ITを活用し、顧客サービスを改善しました。きっかけは、2008年の株価暴落。

株価が暴落したDomino’s Pizzaは、メニューの見直しやITの導入など、サービス改善のためにさまざまな取り組みを行います。取り組みの一環で開発されたのが、配達システムの「Domino’s Tracker」です。

Domino’s Trackerは、顧客がピザの配達状況をリアルタイムで確認できるというもの。現在は、注文システム「Domino’s AnyWare」も開発され、顧客がさまざまなデバイスからピザを注文できるようになっています。

Domino’s AnyWare対応デバイス(一部)
  • Amazon Alexa
  • Google Home
  • Slack
  • Twitter
  • Facebook Messenger

2008年末で一株$4.71だったDomino’s Pizzaの株価は、2021年7月現在、一株$478.18まで上昇しています。Domino’s Pizzaは、ITの活用で顧客サービスを改善し、株価のV字回復をとげました。

DXの可能性は無限大

成功事例をもとに、DXの必要性を解説しました。DXの推進には、莫大なお金と時間がかかります。しかし、業務の効率化や競争優位性の確立など、可能性は無限大です。だからこそ、取り組む価値があります。

ぜひ、当記事を貴社のDX推進にお役立てください。

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