「うちは今のところ、窓口だけで問題なく回っています」——そう感じている施設ほど、実は注意が必要かもしれません。オンライン化はまだ先でいいという感覚の裏で、何かが静かに積み上がっているとしたら、どうでしょうか。現金がなくて帰ってしまうお客様、閉園後に毎日発生する現金回収、券売機を更新するたびにかさむ費用——気づかれないまま蓄積する機会損失やコストのことです。実際に同じ感覚から出発し、その後の運営を変えた施設の事例をもとに、何が積み上がっていたのかを確認してみます。
「今のままで回っている」その言葉が、実は一番のサインかもしれない
現地窓口での手売り販売だけでチケットを売っている施設は、少なくありません。オンラインチケット化という言葉は知っていても、「うちの規模ではまだ早い」と考えている担当者も多いはずです。「今のやり方で特に困っていない」という声もよく聞きます。
しかし、「今のままで回っている」という言葉自体が、実は要注意のサインになり得ます。窓口が毎日開き、お客様が並び、チケットが手渡しで売れている——その光景だけを見れば、たしかに何も問題は起きていません。ただ、問題が見えていないことと、存在していないことは、必ずしも同じではありません。
実際に、かつて同じような状況から出発し、その後の運営を大きく変えた施設があります。まずは具体的な事例から見ていきましょう。
業界の9割が手売りだった時代、那須ハイランドパークも「3K経営」だった
栃木県にある那須ハイランドパークは、藤和那須リゾート株式会社が運営する北関東最大級のテーマパークです。敷地は約50万平方メートル、アトラクションは40種類以上を誇ります。年間来場者数は60万人以上にのぼります。
コロナ禍以前、国内のレジャー施設ではチケット販売の9割以上が手売りだったといわれます。那須ハイランドパークも、その例に漏れませんでした。施設側は当時の運営を、自ら「3K経営」——勘と経験と根性に頼る経営——と表現しています。目指していたのは、そこからの脱却でした。データとデザインに基づいて意思決定する、「2D経営」への転換です。
当時利用していた大手のチケット販売SaaS(月額課金で使うクラウド型のシステム)には、いくつもの制約がありました。顧客データはSaaS側で管理されるため、都道府県別の来場者分析ができません。メルマガ配信も、思うように進められませんでした。月額の手数料も発生し続けます。さらに「明日から販売したいチケットがあっても、SaaSの運営会社に依頼してから1週間くらい待つ必要があった」といいます。窓口の売上は立っていても、「どこから来場者が来ているのか」「どう情報を届けるべきか」がわかりません。「すぐに新しい企画を打てるのか」——こうした問いにも答えられない状態が続いていたわけです。
その後、ビジネスマッチングサービスを通じて7社から手が挙がり、その中からVALUE KITが選ばれました。決め手は、「クオリティ、セキュリティ、カスタマイズ性の3点において、提案が他社と比べて群を抜いていた」ことだといいます。「見積金額は格別安くはなかった」ものの、「開発費と運用費がペイできそう」で、「中長期的にビジネスを拡大できそう」だと判断されました。
エントリーからわずか1週間で会長プレゼンが実施され、その後も毎日のように電話やオンライン会議でヒアリングが重ねられました。作成された提案書は、詳細かつ鮮明な、100枚ほどのボリュームだったといいます。正式発注前に要件定義やモデル図まで作成したことで、社内の稟議承認もスムーズに進んだそうです。
ただし、こうした選定プロセスは、サイバーウェーブが当時、受託開発として提案していた時期のものです。現在はSaaSとして提供しており、要件定義書や提案書の作成といった手続きは、当時よりも簡素になっています。
導入後の変化は、具体的な数字にも表れています。もぎり(入場時にチケットを確認する作業)の処理時間は、1日あたり4時間短縮されました。「1日のゲストが3,000人として、ひとりあたり5秒縮まれば4時間もの時間短縮になる」という計算です。テンキーの自動表示によって、入力速度も上がりました。複数種類のチケットをまとめてもぎれるようにし、部分キャンセルの機能も実装しています。年間パスポートの発行業務でも変化がありました。以前は、別システムのデータをCSVで移行する作業を何度もやり直す必要があり、顔写真の登録にもシステム上の制約があったといいます。VALUE KIT導入後は、こうした個人データの連携がスムーズになりました。
現場の声も届いています。マネージャー(当時)の千頭和仁氏は、「初期段階で内部設計、外部設計を図にしてくれたので、先が見えて安心した」と振り返ります。「コストを比較的早期に回収できる目処が立って、ほっとひと安心した」とも話します。
チケット・営業・広報グループ長(当時)の相河友二氏も評価しています。「ヒアリングでは、こちらの曖昧な要望をすぐに理解して、こういうイメージですよねと提案してくれた」とのことです。「愛着のあるシステムになりましたね」「進行がとても早くて驚きました」というお声もいただきました。
私たちサイバーウェーブは、提案にあたって複数の施設にご協力いただきました。那須ハイランドパークが当時使っていたのと同じ種類のSaaSの管理画面を見せてもらいながら、細部まで研究したのです。既存の仕組みを土台にできたことで、新規開発は全体の3割ほどで済み、工数の圧縮とコスト削減につなげています。
現金のみの窓口で起きる機会損失——「お金がないから帰る」というお客様
那須ハイランドパークと同じグループの那須興業株式会社が運営する、りんどう湖ファミリー牧場でも、似た課題が見えてきました。開園60年の歴史を持つ、観光牧場と遊園地が一体となった施設です。100頭を超えるアルパカを飼育しており、これは日本最多の頭数といいます。ジップライン「KAKKU」やグランピング、花火大会の有料観覧席なども展開しています。
この施設では、現金のみに対応した券売機で単券を販売していました。ここで起きていたのが、見過ごせない機会損失です。「現金がなくなったから帰ります」というお客様がいたのです。中には、「一旦入園ゲートを出て、コンビニでお金を引き出してくる」という方もいました。
団体客が100人単位で訪れた際には、券売機の前に長い行列ができ、他のお客様に迷惑をかけてしまうこともあったといいます。せっかく足を運んでくださったお客様に、現金という理由だけで入場をあきらめさせてしまう。あるいは、行列や外出という手間をかけさせてしまう。窓口の前で起きているこうした場面は、日々の売上データだけを見ていては、なかなか気づきにくいものです。
閉園後の現金回収、新紙幣対応の券売機更新——見えないコストの正体
機会損失だけでなく、現金を扱う以上避けられないコストもありました。りんどう湖ファミリー牧場では、複数箇所に設置した券売機から、毎日、現金の回収と売上確認を行う必要があったのです。加えて、2024年夏に発行された新紙幣への対応も課題になりました。券売機を新紙幣対応の機種に切り替えるとコストが膨らむため、すべての券売機を対応させることができず、スタッフが新旧紙幣を交換する作業まで発生していたといいます。
このりんどう湖ファミリー牧場でVALUE KIT導入のきっかけとなったのは、グループ会社である那須ハイランドパークの先行導入でした。那須ハイランドパークの担当者へのヒアリングを通じて、あることがわかりました。売上連動型の大手チケット販売SaaSから、月額固定のVALUE KITへ切り替えれば、コスト削減が見込めるということです。那須ハイランドパークから異動してきた社員が、りんどう湖側のプロジェクトリーダーを務めました。
導入のタイミングにも、印象的なエピソードがあります。従来利用していたSaaSでは、キャンペーン用のチケット作成を依頼しても間に合わないという事態が起きていました。そこで急遽、運用開始日を8月26日に前倒ししたのです。VALUE KITなら、新しいチケットを自社ですぐに作成できる——このメリットが、実際の運用を通じて実証されました。
現場への浸透にも力を入れています。60数人の社員にマニュアルを配布し、4日間の説明会を開催しました。若手社員や高校生アルバイトが、不慣れなスタッフに教える場面もあり、「チームワークが生まれた」といいます。
導入後は、機会損失そのものが減りました。キャッシュレス対応によって、来園客から「わざわざ現金を用意しなくていい」という評価を得られるようになったのです。「WEBで買えます」と、その場で案内できるようにもなりました。業務面でも、複数箇所の券売機を回収し、売上を確認する時間が短くなっています。残業代の削減効果も見え始めているところです。
カスタマーサービスグループ グループ長の清河真帆氏は、「キャッシュレスが当たり前というお客様のニーズに、ようやく応えられた」と話します。「地方の観光地でも、こうしたキャッシュレス文化を取り入れることで、首都圏からのお客様が増えることにつながる」という期待も語っています。
全部を変えなくていい——1種類のチケットだけWeb化する始め方
「今のままで回っている」という状態の内側では、機会損失や見えないコストが静かに積み上がっていることがあります。那須ハイランドパークとりんどう湖ファミリー牧場の事例が示す通り、課題は顕在化していないだけで、存在していないわけではないのです。
りんどう湖ファミリー牧場では、今も次の展開が構想されています。WEBチケットストアへの予約機能の組み込みや、ジップライン「KAKKU」(1時間ごとの各回定員制)の予約のWeb化です。花火大会の有料観覧席やイベント、グランピングの申し込みのWeb化も構想されています。
開発の過程では、サイバーウェーブ・りんどう湖ファミリー牧場・那須ハイランドパークの3社で完成画面のイメージを共有しながら進めました。「絆が生まれた」というエピソードも残っています。
だからこそ、全部を一度に変える必要はありません。窓口での手売り販売はそのまま残しながら、まずは1種類のチケットだけをWeb化してみる、という始め方があります。
サイバーウェーブでは、お試し部分導入という段階的な導入プランを用意しています。初期費用は0円で、月額利用料は決済手数料込みで売上の4%弱です。解約違約金や契約期間の縛りもありません。既存の窓口販売システムを解約する必要もなく、そのまま併用できます。
カード加盟店契約は一切不要です。システムの初期設定や運用設定、スタッフ向けのもぎりレクチャーまで、サイバーウェーブ側が無料で対応します。施設側にお願いすることは、「販売するチケットを決める」「公式サイトにリンクを貼る」の2つだけです。
おすすめしたいのは、いきなり主力アトラクションの利用券や年間パスポートを載せることではありません。まずは、「急に開催が決まったイベントのチケットだけ」「期間限定・曜日限定のチケットだけ」などの小さな一歩から試すことです。リスクを抑えて始められるうえ、手応えを確かめてから対象を広げられます。
「今のままで回っている」という感覚を、私たちは否定しません。ただ、その内側に何が積み上がっているのか、確認するお手伝いができると考えています。まずは、私たちに話を聞かせてください。