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「DX銘柄2022年」を経済産業省が発表、「DX推進戦略と経営戦略とがかみ合っている」が評価ポイント

2022年6月7日に「DX銘柄2022年」が発表されました。DX銘柄とは、DXの仕組みを社内に構築し、会社の成長につなげた企業を発表する取り組みです。経済産業省、東京証券取引所、情報処理推進機構が共同で選定しています。

DX銘柄2022年では、中外製薬株式会社日本瓦斯株式会社の2社がグランプリ企業に選ばれました。本記事では、取り組み内容・評価されたポイントについて解説します。

中外製薬株式会社

会社概要

中外製薬会社は、「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献します」をミッションに掲げ、新薬開発に取り組んでいます。

同社では、2030年に向けて「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」を目標に企業の変革に注力しています。具体的な戦略を定めたものが、成長戦略「TOP I 2030」です。

(出典:中外製薬株式会社ホームページ 成長戦略|会社情報|中外製薬 (chugai-pharm.co.jp)

DXの取り組み状況

「TOP I 2030」の中では、2つの目標を実現するためにDXが重要だと位置づけられています。デジタル化を推進するための具体的な方針として、中外製薬株式会社は「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を策定。3つの取り組みをしています。

1.デジタル基盤の強化
デジタル基盤の強化のために、3つの仕組みを取り入れています。

・Digital Innovation Lab
社員の自由な発想を形にするための仕組みです。挑戦する風土作りに貢献しています。

・人材育成基盤 CHUGAI DIGITAL ACADEMY
デジタル人材を育成する仕組みです。

・Chugai Scientific Infrastructure
AWS を用いて構築された、会社のデータが利用しやすいようにする仕組みです。

2.すべてのバリューチェーン効率化
・デジタルプラント
生産性を高めるために、すべての作業記録を電子化したり、現場の状況が正確に把握できるよう作業進捗の視覚化などに取り組んでいます。デジタルプラントは現在検証中の取り組みです。2022年半ばを目標にデジタル基盤を構築し、各地の工場での導入を目指しています。

3.デジタルを活用した革新的な新薬創出
AI を用いて、新薬の開発率の向上などを目指しています。

評価されたポイント

これらの取り組みが評価され、中外製薬株式会社は「DX銘柄2022」に選ばれました。審査員からは以下のように評価されています。

  • 「新成長戦略『TOP I 2030』とデジタルに関わる方針『CHUGAI DIGITAL VISION2030』が噛み合っている。創薬、生産、医療関係者・患者を網羅した取組がなされている」
  • 「ビジョン、戦略と人材育成等の関係性が明確であり、デジタルの本質を理解した上での全社的な取組が行われている」
  • 「トップのコミットメント、CDOやデジタル専門組織の設置、デジタルリテラシー底上げの取組、スタートアップ との協業会社などの体制に加え、トライ&エラーやアジャイル文化の明確化など、抜けがない」

現場だけではなく経営層もDXの本質を理解していることや、会社の成長戦略とDXの推進戦略との整合性が評価され、グランプリを受賞しました。

日本瓦斯株式会社

会社概要

日本瓦斯株式会社は、エネルギーを通じた地域社会への貢献を使命として、エネルギー事業とプラットフォーム事業を軸に事業を展開しています。ガスの販売や、ガスメーターのデータをオンライン化する「スペース蛍」の提供などを行っています。

DXの取り組み状況

日本瓦斯株式会社では「NICIGAS 3.0」と呼ばれるビジネスモデルの変革に挑戦しています。エネルギーを販売する「エネルギー事業」から、エネルギーを最も効率よく利用するための仕組みまで提供する「エネルギーソリューション事業」への変化です。

同社ではDXを「エネルギーソリューションへと事業を進化」させる軸として位置づけており、3つの段階を踏んでNICIGAS 3.0を実現しようとしています。

・Stage1
ガスと電気をセットで顧客に提供する。

・Stage2
太陽光発電など分散型エネルギーをサブスクリプションとして普及させ、デジタルを使って発電と電気需要のバランスが最適になる「スマートハウス」を実現する。

・Stage3
エネルギー利用が最適になる状態をAI を使って導き出し、現実に反映させることでコミュニティ全体のエネルギー利用が最適になる「スマートシティ」を実現する。

また、既に紹介した「スペース蛍」も、DXの一例です。従来に比べ、取得できるガス使用量のデータが720倍にまでなっています。データを活用することで、ガスの供給の最適化を実現できる上に、ガスメーターの検針も不要になりました。

(出典:経済産業省、株式会社東京証券取引所、情報処理推進機構「デジタルトランスフォーメーション銘柄 (DX銘柄)2022 」dx-report2022.pdf (meti.go.jp))

評価されたポイント

審査員からは以下の評価を受けています。

  • 「既存深化、新規変革の各事例ともに、同社の包括的なDXの取組の着実な進展が見られ、事業リスク・ 課題への対策としても具体的かつ合理的である。KPIも明快でKGIへの帰着ストーリーも腹落ちする」
  • 「発送電分離や導管分離など、インフラ領域が大きく変わる中で、プラットフォーマーに転身しようという絵を描いており、単なる絵に止まらず、IoTやマイクロサービスによるアプリケーション開発、ブロックチェーン等のテク ノロジー活用という観点で突出している」
  • 「経営戦略上のDXの位置づけも明確で説得力がある。同社は銘柄応募企業の常連であるが、毎年確実な進化が見られる点が素晴らしい。実現能力も十分」

課題解決の手段が合理的であることや、DXが着実に実現しつつある点が評価されたと言えます。

DXの取り組みとして評価されやすいのは?

グランプリ企業として選ばれた2社の取り組みで共通して評価されたのは、「DX推進戦略と経営戦略とがうまくかみ合っていること」でした。

中外製薬株式会社は「経営戦略2030」の中で、成長のための策として「開発」や「製薬」などを挙げています。これらの方策を支える基盤として「CHUGAI DIGITAL VISION2030」が位置づけられており、DXが進められています。

また、日本瓦斯株式会社は事業方針として「エネルギーソリューション事業の推進」を掲げています。事業方針を実現するためにDXは欠かせません。例えば、DXの例である「スペース蛍」はエネルギーの使用状況の把握に役立っており、エネルギーを効率良く使うための基盤となっています。

両社とも、情報システムの導入に留まらず、経営戦略を推し進めるためのデジタル化を実現させています。その点が「DX推進戦略と経営戦略がうまくかみ合っている」と評価されたと考えられます。

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